無感覚 ページ6
いつもは窓辺に群がっている雀が、今日はいなかった。
綺麗な光を包んでいたカーテンを開いたのに驚いて直ぐに飛んで行ったのか、今日は寒いからもっと暖かい場所に行ったのか。
どうにせよ、1日の始まり方はいつもに増して最悪だった。
昨日のことが妙に気になってしまう。
結局私は補導される前に帰ったのだけど、彼はどうしているんだろうか、そんな疑問ばかり頭に浮かんでしまって、深く眠りに落ちていくことは出来なかったらしい、両目の隈はいっそう深く「闇」を示した。
今日は土曜日。
この週末もいつも通り、我が家は義父と義母と義兄の3人で、どこかに出かけるはずだ。
私は家でずっと一人……
なんとなく慣れていたその感情が独りでに胸の中で膨らんでいって、制服を着た。
……部活に行くつもりもないけど、他にしっかりした着替える服などないから、外に出る時は制服で行くしかないだろう。
鍵と鞄だけ持って、静かに家を出た。
またあの人に会えるかもしれないなんて、信憑性のない期待が少しだけ、揺れる木陰に隠れていた。
『やっぱり、いないか……』
案の定、休日の朝の公園にいたのは白いトイプードルを連れた大学生くらいの人と、ベビーカーを持って歩くお母さんのような人だけだった。
そもそもなんのために彼はあそこにいたのか、それすらもよく知っていないのに会えるわけがないのだけれど。
そのまま目的もなく、ぼうっと歩いていると。
茶トラの猫が、ベンチの下で自分の手を器用に舐めていた。
首輪はないけど、飼い猫だと言われても疑わないくらいに綺麗な目をしていた。
『君も独り?』
ベンチの前に屈んで、その猫に手を差し出した。
ピンク色の可愛らしい鼻を近づけたあと、何事も無かったように立ち上がり、ベンチの下をくぐり抜けていった。
小さい時にしたみたいに、猫のあとを着いていく。
空き地の塀の上を登ったり、商店街の裏を通ったり。
幼い頃の高揚と緊張感を思い出せるような気がして、そのあとは無心で。
目の前に人工川が見えてきた。
体が軽くて脚力のありそうな彼女(猫)が、悠々をそこを超えていこうとする。
私には死ぬ気で飛び超えれば向こうの岸に着きそうな、小さい川だ、多分。
そう考えるにはもう、深く考えようともしていなかったので、そのまま足を踏み出していた。
もう周りからの目なんて、どうでもよかった。
自分が落ちようが、飛び越えようが、誰も私を気にかけないのだから。
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あぽろだよ。 - ほんとにすみません。ブラコンが揺れていた。に見えました。すみません。 (2020年4月23日 17時) (レス) id: b5c026bc9f (このIDを非表示/違反報告)
りぃず(プロフ) - ありがとうございます、、!暗くなったり明るくなったり色々忙しい小説ですが、応援して頂けると嬉しいです…! (2019年6月24日 7時) (レス) id: 7803f93653 (このIDを非表示/違反報告)
つくし(プロフ) - 実は作られたときから、ずっと好きで読んでました…。これからも更新頑張ってください!応援してます! (2019年6月23日 13時) (レス) id: ad001c401a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りぃず | 作成日時:2018年12月31日 12時