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違和感。 ページ5

肩の振動に、驚いて目を覚ました。
忘れていたブランコの座板の硬さを感じながら、振動を受けた方を恐る恐る見た。





「…寒くないの?」

年は同じくらいだろうか、そんな男の人が迷わず私に話しかけてきた。
なんとなく、テレビに出てきそうな程格好の良い訳ではなかったが、スッキリした目鼻立ちの綺麗な人だ。



『……誰、ですか』


背中あたりがゾクゾクと強張る。
……変質者じゃないよね。




「あー、慧実っていうんだけど。近所の高校の」

ここから近い高校は、私の通っている学校しか特にない。

……先輩か後輩なら大体どこかしらで見た事のあるはずなのに、初めて見た顔だ。


『今学校の時間ですよ…?』

そう言うと彼はハッとした表情をして、目線を泳がせる。



……嘘をついているんだ、この人。
なんとなく、そう思った。

「学級閉鎖ってやつ、かな?」

ハハハ、と乾いた芯のない笑い。







やっぱり、なんだかこの人は……おかしい。




そう思ったのに、怖かったり、嫌な気持ちは知らぬ間に消えた。





名前も歳も、すんなりと答えてしまったのは、多分そういうことなんだろう。






歳を言ってから、彼が不思議そうな顔をした。
……何を聞かれるか、予想はできてる。


制服を着ているのに学校に行っていない私を変に思っているはずだ。


「Aちゃんこそ学校は……?」



……ほら、やっぱり。

答えにくい質問に口篭る。
初対面のぎこちない雰囲気がまた戻ってきて、『ちょっと嫌になって』と無理に笑う。



彼が笑い返してくれることは無かった。
真っ直ぐに私の目を見て、

「そう」


一言いったきり、何も言わなかった。


『…事情聞かないんだ』

「言いたくなさそうだし」


不思議な人だ。
私ならきっと聞いたと思う、多分。


真っ白なパーカーに、淡い水色のズボン。
こんな季節に上着なしで寒くないのかな。

制服の下に2枚着ている私もまだ寒い。

『慧実くんは何高校なの……?』

「え、近くの…」



さっきと同じ答えを繰り返す。
やっぱり言えないんだ。



『……でも近くの高校は私の学校しかないよ、田舎だから』



「ノーコメントで」

彼はピンク色の綺麗な唇の前に人差し指でXを作る。


『……じゃあ家は?』

もう少し、彼のことが知りたい。
今日別れたら、もう会えないだろう。


「言っても分かんないと思うよ、…まあこの国じゃない、かな」




『え?』


よく分からないことを言った君は、笑った。

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作品ジャンル:恋愛
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あぽろだよ。 - ほんとにすみません。ブラコンが揺れていた。に見えました。すみません。 (2020年4月23日 17時) (レス) id: b5c026bc9f (このIDを非表示/違反報告)
りぃず(プロフ) - ありがとうございます、、!暗くなったり明るくなったり色々忙しい小説ですが、応援して頂けると嬉しいです…! (2019年6月24日 7時) (レス) id: 7803f93653 (このIDを非表示/違反報告)
つくし(プロフ) - 実は作られたときから、ずっと好きで読んでました…。これからも更新頑張ってください!応援してます! (2019年6月23日 13時) (レス) id: ad001c401a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りぃず | 作成日時:2018年12月31日 12時

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