放棄 ページ14
Aside
「今日部活なんだけど……掃除任せていいかな」
いかにも申し訳なさそうな表情を浮かべて、同じ班の女子達が目の前に群がった。
丈の短いスカートをちらつかせながら、じりじりと迫ってくる。
(どうせ断ってもやらせる癖に……)
かくいう自分も先日1日サボってしまったので、頷くしかないのだけれど……。
下手な作り笑いを浮かべて頷いた。
「……いいよ」
「ごめんねえ、私達忙しくて」
「うん、頑張って」
確かに、部活にも塾にも行かない私は忙しくともなんともない。……だけど、もう教室を出ていってしまった彼女たちには暖かい家族がいるのだろう。
そこには、私がどう努力しても埋まらない差がある。
どれだけ忙しくても、それ相応の幸せがあるのだから。
……でも家には帰りたくないので、1人で学校にいる時間が増えるならそれで良いかもしれない。
静まり始めた教室で、ロッカーから箒を取り出す。
(今日はどこへ寄ろうかな)
薄埃を掃きながら、学生らしく窓の外を眺めてみる。……さとみくん。まだ鮮明なその記憶を辿りながら青い空を見上げた。
雀が群れを作って飛んでいるのが見えて、また虚しくなった。
「今日も1人か」
気まずそうな担任の声に苦笑いを浮べる。知らないうちに会議から戻ってきたらしい。
私だって好きで1人でいる訳じゃない……。
それでも今は、1人の方が断然楽なので閉口する。
「先生も手伝うよ」
「……ありがとうございます」
すっかり静まり返った教室に、吹奏楽部の音が流れてくる。木管の合奏らしい。
「吹奏楽部だったよな」
手に力を込めて、聞かなかったことにする。
担任の言う通り、吹奏楽部でクラリネットを吹いていた。学校で貸された楽器を使うしかない部員は自分だけだったので諦めざるを得なかった。
答えたくない質問には答えない勝手な生徒だと思ってくれればいい。
この10数年、物欲も情も全て捨ててきた人生だ。
「こんな時間か……もう帰っていいぞ」
「…はい、ありがとうございます」
彼なりに空気を読んでくれたのだろう、普段より早く終わった。
外靴に履き替えて外へ出る。グラウンドから運動部の掛け声が耳に届いてきた。そろそろ運動しなければ太るかもしれない、そう思いながらあの公園へ足を進める。
また彼に会えるかもしれない、なんて
淡い期待を抱きながら。
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なんだか色々疲れますが、お互い頑張りましょう(汗)
りぃず
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あぽろだよ。 - ほんとにすみません。ブラコンが揺れていた。に見えました。すみません。 (2020年4月23日 17時) (レス) id: b5c026bc9f (このIDを非表示/違反報告)
りぃず(プロフ) - ありがとうございます、、!暗くなったり明るくなったり色々忙しい小説ですが、応援して頂けると嬉しいです…! (2019年6月24日 7時) (レス) id: 7803f93653 (このIDを非表示/違反報告)
つくし(プロフ) - 実は作られたときから、ずっと好きで読んでました…。これからも更新頑張ってください!応援してます! (2019年6月23日 13時) (レス) id: ad001c401a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りぃず | 作成日時:2018年12月31日 12時