ci/とても素敵な六月でした(Eight)◎ ページ14
夏の夕暮れ。聞こえるのは救急車のサイレンと周りの人間が騒めく声。事故があった。自動車と一人の女が衝突し、女の体躯は無惨にも転がった。
彼女の意識はその一瞬にして霞み、走馬灯が早送りで脳内に再生される。脆くなった体躯とは違い、その記憶は鮮明に脳内を駆け巡った。
脳裏に映し出される、道徳の一線を千切った彼の笑顔は、今となっては憎いもの。女は嘲笑するかの如く最後の息を吐いた。
彼女の最期を目に焼き付けていた彼の叫びも聞かないで。
彼と出会ったのはひょんなこと。仕事帰り、倒れている彼を介抱したのがきっかけ。何で倒れていたのかはもう覚えていない。
吊り上がった夕焼けのような橙の眼を今でも覚えている。大柄で目つきが悪いと裏腹に、彼は口が上手で話していてとても楽しかった。
それから何度か会うようになって、何回目かの春。
「俺さ、Aさんのこと好きになったみたい」
いつの間にか片思いしていた彼からそんなことを言われて、嬉しさで涙を流したのを今でも忘れない。優しく微笑んで涙を拭ってくれた彼の手の感覚も忘れられない。
『私も好き』
灰色のような世界が一瞬にして鮮明に色づいたのが分かった。つまらない人生に花を咲かせてくれた彼には感謝しかなかった。幸せだった。
それなのに、彼は彼女を裏切った。
詰めが甘かった詐欺師は彼女に本性がバレて、本当に愛していた彼女に死んでも癒えぬ傷を与えた。
しかし、バレた時に気がついた罪悪感。男の方も彼女を心から愛していた。
『本当に馬鹿な嘘つき』
怒り、悲しみ、絶望、様々な負の感情が混ざり合った涙はその言葉と共に落ちていった。
呼び止められても女は走った。
『好きだったのは私だけだったのね』
吐き捨てた言葉は彼の心臓を抉るばかり。逃げる彼女をひたすら手放すまいとその手を伸ばす。
もう、その手を握る愛しい彼女はいないと言うのに。
──大嫌い。だけど愛していたよ。来世があるなら、道徳を捨てないでいて。そしたらまた会いましょう──
彼女の願いは、男には届かなかった。彼にとって、一生忘れられることの出来ない夏になったことだろう。
＿＿＿＿＿
リリィ様リクエストありがとうございます。
初めて聞く曲で何度も聴いて書いてを繰り返していたらかなり遅くなってしまいました。本当に申し訳ないです…
改めてリクエストありがとうございました。
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色樹 - 嬉しいです!!いくらでも待ちますよ! (12月24日 8時) (
レス) id: 09f29be611 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - 色樹さん» リクエストありがとうございます！返信が遅れてしまい申し訳ありません…！ (8月23日 12時) (レス) id: b86c248f05 (このIDを非表示/違反報告)
色樹 - ２回目なのですがzmさんでデーモンロードってよろしいですか?あとgrさんでシャドーシャドーもできたらおねがいします!! (8月5日 21時) (レス) id: 09f29be611 (このIDを非表示/違反報告)
ミアン - あまり無理しないで下さい！いくらでも待ちます！！ (2023年4月28日 18時) (レス) id: 5384c31615 (このIDを非表示/違反報告)
aoi(プロフ) - ミアンさん» リクエストありがとうございます！大分溜まっているので長らくお待たせしてしまうかもしれませんが…頑張ります！ (2023年4月26日 17時) (レス) id: b86c248f05 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：aoi | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/airio08191/
作成日時：2022年11月30日 20時
