■115.ハート･クラッシュ ページ35
***
Naoki Side
直輝｢…………A…、｣
.
彼女が眠る病室で、1人。
絶望と不安と罪悪感に苛まれながらも、
目を覚まさないAの手をｷﾞｭっと握れば、
ちゃんと温かいのが唯一の救いだった。
.
…あの後、結局俺は復讐を遂げるどころではなくなり、
倒れ込んでしまったAに狂ったように声をかけ続けた。
.
その隙にあずさはどこかへ逃げてしまったのだが、
救急車で病院に運ばれるAを見ていたら、
そんなこともどうでも良くなってしまうほど
激しく気が動転していた。
.
“…直輝…、…大好きだよ”
あの時のAの声が耳から離れない。
.
.
＿＿＿＿＿＿…なんだよ、なんで先に言うんだよ…。
しかも言い逃げなんて。
…もし、俺がもう君に思いを伝えられなくなったらどうするんだ…。
君だけ伝えて、言い逃げなんてズルすぎるだろう…。
.
ぎゅっ…、と握っていた手に力が籠る。
綺麗な寝顔を見つめながら、
ぽた、ぽた、と自分の涙が彼女の布団を濡らしていく。
.
…ごめんね、ごめんねA…、
君はずっと、
俺が暴走しないか、俺が危険に巻き込まれないか
心配してくれていたのに…。
.
.
ごめんね、
ありがとう、
…それから…、
.
君に伝えたい言葉がありすぎる。
君が隣で笑っていてくれなきゃ、
俺はどうしていいのか分からないんだ。
だからお願い…。早く目を覚まして…？
***
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作者名：紙兎
| 作成日時：2020年3月16日 7時
