□18.Chain-後- ページ18
***
“君は何も悪くない、よく一人で頑張ったね”
初めて彼に会って、そう言われた時、
私は涙が止まらなくなった。
そう…、誰かに分かって欲しかった。
頑張って耐えようとしていたこと。
母を傷つけないように頑張ったこと。
私だって辛かった、怖かった、嫌だった。
なのに、全部いつの間にか私のせいみたいになってて、
反論しようにも誰にしていいのかさえ分からなくて、
私の味方なんて、どこにもいないって思ってたから。
.
“僕と一緒に、僕の理想の世界をつくってほしい”
“君や僕みたいな傷ついた人間を救う世界を”
.
…今考えれば、かなり怪しい…宗教の勧誘みたいなことを言われていたような気もするが、
あの時の私には、多分なんでも良かった。
彼が私を見つけてくれて、手を差し伸べてくれた。
その彼が、私を、
必要だと思ってくれるなら、なんでも。
.
それから私は彼の力を借りながら、
なんとか高校を卒業して、
その後は逃げるように家を出た。
それからは、ずっと直輝と一緒に暮らしている。
.
ここに住むようになった時に、
課せられた条件が二つ。
1つ目は、直輝のお父さんの事件の調査を手伝うこと。
そして2つ目は、
もし何か危険な目に遭った場合は、
…すぐに直輝から離れること。
.
.
彼と一緒にいる時間が私にとって何よりの幸せ。
彼が、いていいよと言ってくれている間は、
ここが私の居場所。
たとえタイムリミットがあったとしても。
***
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作者名：紙兎
| 作成日時：2020年1月21日 0時
