32 此岸 ページ34
舞台の上には
再び僕とあの人影だけが残される。
『完成しませんでしたね あなたの物語』
「……」
人影は黙ったまま俯いた。
『鶴丸さん、あなたのこと気付いていたみたいですね』
「僕は…有り得たかもしれない過去ですか？」
彼はきっと どこかの歴史の、もう閉ざされた過去で折れた秋田藤四郎。
元主を守れなかった未練でここに存在する
人間でいうところの“魂”。
そして、僕達が、僕達の歴史の為に消し去ってしまった物語の芽だ。
「そっか。僕も君も守れなかったんですね」
『いいえ、僕は守りましたよ』
歴史を守って 実季様を見送って
全員無事に本丸に戻ってきた。
今ある大切なものを全て守りきった。
「でも実季様は目の前で亡くなった！」
『人の死を。
僕達は人が生きた物語を守ったのです』
表情は分からないけど、人影は確かにたじろいだようだった。
それが正しかったのかは分からないけど、
と最後に付け加える。
彼は顔を上げると、ゆっくりとした動作で僕に背を向ける。
「生きることがあの人の幸せだと思っていました。
僕はっ、間違っていたんでしょうか」
『正解なんて無いんですよ きっと。
でも僕が見たあの方の最後は、幸せそうに笑っていましたよ』
「そう…ですか」
泣きそうなような、笑ったような声で呟いて
彼は煙の中に消えていった。
あとには鳥の羽ばたく音と、再び静かな暗闇だけが残った。
『主君、僕達の戦いはこれからも続きます
その道は険しくて辛いものになるでしょう。
もしかしたら、選んだ道が間違っているかもしれません』
客席をしっかり見て、力強く宣言する
『でもこれだけは必ず約束します。
僕達はまた無事にここに戻ってきます
だから、また会いましょう！この祭りで』
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愛莉(プロフ) - ＊ haru ＊さん» haru様こんばんは コメントありがとうございます！この作品が少しでも日々の励みになっているのならとても嬉しいです！haru様も是非ご自愛ください (2020年8月19日 22時) (
レス) id: 5de24330da (このIDを非表示/違反報告)
＊ haru ＊(プロフ) - こんにちは！とっても面白くて最近はこの作品が更新されることが楽しみで仕方がありません…。素敵なお話をありがとうございます！これからも応援しております！暑い日が続きますが、どうかお体に気をつけてくださいませ(*^^*) (2020年8月19日 14時) (レス) id: 91042359bd (このIDを非表示/違反報告)
愛莉(プロフ) - おもちさん» おもち様 コメントありがとうございます。とっても励みになりました！良ければこれからもよろしくお願いします！ (2020年8月18日 20時) (レス) id: 5de24330da (このIDを非表示/違反報告)
おもち(プロフ) - 1話目からすっごい面白くて一気に読んでしまいました！応援してます！！ (2020年8月18日 13時) (レス) id: 94d13f240c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：愛莉 | 作成日時：2020年8月2日 0時
