【刀ミュ】最年少の高校生男子は秋田藤四郎になりました

２　オーディション ページ4

時が経つのはあっという間で
気付けば今日がオーディション本番の日だ。



会場には数人の俳優が集まっている。
全員 秋田藤四郎 という役に似合う
可愛らしい見た目をしている。


『(背は僕が1番近いけど
勝てるのってそれだけじゃない？)』


ここに来るまでは確かにあった自信も、いざライバルを
前にすると急に萎んでくる。
あ、あの人前に舞台で見た事ある
あっちは先輩の……あれ、高校生僕だけ？


『(ううっ僕本当に大丈夫かな)』


緊張すると、自分の駄目な所ばかりが目につくものだ。

僕には、2.5次元の経験がない。
芝居経験はあるけれど、それも中学生の間は満足に
できていなかった。
一度根を詰めすぎて体調を崩したときに事務所からストップがかかり、今年になってやっとお許しが出たからだ。
ちなみに、去年は主にモデル業をやっていた。



ブランクがある上に経験も少ない。
憧れだけでどうにかなる世界じゃないのも分かってる。
…だからこそ、オーディションが決まってから今日まで
必死に練習してきたのだ。


『(そうだ。沢山練習したじゃないか)』


秋田君らしい声も歌も仕草も殺陣も、全部。
なら僕にできるのは、それを出し切る事だけだ。



「それでは次の方」
『はい！スカイプロモーション所属
笹沼Aです。よろしくお願いします』


いよいよ始まったオーディション。
気付いた時にはもう緊張は消えていた。





すんなりと自己紹介が終わり
歌とダンス、セリフ審査へと進む。


緊張がほぐれたからか大きな失敗もなく
それが終われば、最後は自己アピールの時間だ。


「では次、そちらの方」


また緊張がぶり返してくる。
心臓の音がうるさい。


『よろしくお願いします。』

「はい、よろしく」

『僕は、特技のアクロバットを交えた
殺陣を披露させて頂きたいと思います』


持ってきたのはコレ。木刀一本である。
生憎秋田の本体のサイズよりはかなり大きいが、
なんにせよ殺陣の技能は必要になるからだ。

愛用の木刀を構え、息を吐く。


一歩一歩軽やかに、時折バク宙などを混ぜながら
目の前に“居る”敵と刃を交える。

体が小さいならそれを生かして。
アクロバティックな動きは僕の強みだから。
小柄な短刀らしく、でも大きく見せられるように。


『……っ、以上です。ありがとうございました！』


出し切った。
最後の一歩まで間違えなかった。



『(あとは結果を待つだけだ)』

運命の日は三週間後。
不思議と、不安は無かった。

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