第2話 ページ3
·
「へへ、買いすぎちゃったかも」
両手の紙袋を見つめて、思わず笑みがこぼれる。
あの後さらに別の服屋をめぐり気に入った服を買うと、本屋に立ち寄り好きな作家の新刊を買った。
その結果がこれである。
ただ本人は後悔した様子はなく、むしろ満足そうだ。
「うーん、今から駅に行っても電車が来るまでまだ時間あるなぁ」
どうしようかと廃ビルの壁にもたれてスマホの電源を入れようとするが、それはスクリーンからの音により叶わなかった。
ジジジ……
「?」
ウー、ウーウー
ウー、ウー、ウー、ウー……
「な、何これ……」
辺り一面に響き渡る激しいサイレンの音が、私には異様に怖く聴こえた。
スクリーンには緊急政府放送、と文字が並んでいる。
フッ……
文字が消えたかと思うと、今度は私には見覚えのある顔が映しだされた。
「日本国民の皆様、今晩は。私は《言の葉党》党首、東方天乙統女でございます」
「!?東方天、乙統女……?何でこの人が……」
そんな私の疑問に答えるかのようにスクリーンに映る自分が所属する党首は言葉を続けた。
「今から重要なお知らせをいたします」
シ……ン
「繰り返します。日本国民の皆様、今から重要なお知らせをいたします」
東方天さんの声が聞こえる中、一瞬スクリーンに私と同じ言の葉党の党員である女性が一人の男性を連れてくる映像が映った。
「この男の人って確か……」
しかし私は次の東方天さんの言葉により、続きの言葉を発することが出来なかった。
「現時刻をもちまして《言の葉党》が政権を握ることになりました」
「……は?」
何を言ってるんだ、あの人は。
私が呆然とする中、東方天さんの話は止まることなくどんどん進んでいく。
「急な事態に驚かれるのは無理もございません。そこでこの方に来ていただきましょう」
パチンッ
「皆様ご存知とは思います。こちらは現内閣総理大臣……いえ、前内閣総理大臣です」
前って、どういうことだろう。
それに今スクリーンに映る内閣総理大臣は、何かとんでもないものに怯えているように見える。
駄目だ、分からないことが多すぎる。
続く お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←第1話
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:A I R I | 作成日時:2020年9月13日 21時