深海のヒヤシンス【影山飛雄】 (ページ4)

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「Aちゃん！」

腕に包帯を巻いたあの子はよく私の病室に来た。
キラッキラの笑顔で私の名前を呼んで、沢山お話をしてくれた。

あの子はバレーボールが好きだと言った。

でも、体が弱い私は一緒に出来る訳もなく話を聞くだけ。

最初はあの子がバレーボールの事を話す時が1番楽しそうで好きだった。

でも、その後に一緒に見たテレビで写っていた、
【小さな巨人】

身長は他の選手に比べて全然低いのに、ダン！！と飛んでボールを打つ姿に心を掴まれたのをよく覚えている。

「俺もいつかあのコートに立つんだ！！」

凄いな、良いな、私もバレーボールしたかったな。
体さえ丈夫だったら……話を聞くだけじゃなくて、私もあんな風に飛べたのかな。

そんなある日私は泣いた。

ずるい、私もバレーボールしたいのに、私も丈夫に生まれたかったって。

あの子に八つ当たりしたんだ。

そしたら、ボロボロ泣いてさ……

「俺…っAちゃんの分までやるよ…！！
だから、俺がっコートに立つ時は一緒だ！！」

あの時は何を言ってるのかよく分からなかったけど、私の事を心配してくれてるのは分かったから、ありがとうって言った。

そしたら、涙でグズグズの顔であの子は笑ってたんだよね。

好きだな、って分かったのもその時。

「でも、ちょっとだけでもいいから…いつか、
Aちゃんが退院したら一緒にバレーボールし
ようね！！」

差し出された小さな小指に、私の小指を絡めて。

また一緒に笑った。

あの子が通院しなくなって会うことは無くなったけど、好きな事も、約束の事も、あの子の事も

何も忘れてないよ。

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「ほーーーら！！Aちゃん？
今日髪切りに行くって言ってたじゃない、そろそ
ろ起きてねー」

『ん………あれ、病室…？？？
白衣の天使？？』

目の前には、白衣の天使と呼ばれるナースさんがいた。

「凄い爆睡してたわよ？ほら、涎出てるから
顔洗ってらっしゃい」

『え、ヤバ。』

鏡を見て、爆発した猫っ毛、目だけで人を殺せそうなチベスナ顔、女子として見られてはいけない涎。

これだから寝起きは嫌いなんだコノヤロウ。

……え？病弱な可愛い女の子を期待してたの？

悪かったなこんなガサツな残念な女で。目で殺してやろうか。