忍術学園の六年生には、女子がいる１１

裏まで見えない、の段１０ ページ29

微笑むAの冷たい目は、咲目を突き刺すような圧力を与える

今、言われた言葉が本当ならば、自分が罠に最初から嵌められていたのかと、咲目は混乱した

『頭の中、グルグルみたいですね。でも、本当なんですよ？私は、貴方にずっと前から目を付けていたんですから。』

嘘をついているとは、思えない淡々とした口調に咲目は、冷や汗を流す

咲目「つまり、僕が声をかけた時から、操られていたんですか…？」


パニックになっている咲目にキョトンとした顔のAが、何を今更言っているんだとと言いたそうな顔をしている

膝から崩れ落ちた、咲目は自分の願望が壊されたこと、また、罠の嵌められ操られたことに、絶望を感じていた

そんな咲目の肩に、Aが優しく手を置き、顔を近づけ、ニヤリと笑った


『貴方は、私を甘く見すぎたんだよ。親密な関係になれば、貴方を裁くことが出来る。それに、忍術学園の皆んなは、私に何か有れば、貴方の仕業だと思うように、紹介もした。上手くいってると勘違いしてたみたいだけど、私に狙われた時点で、貴方は終わり。』

容赦なく話された真実に、咲目は体の力が抜け、その場に倒れそうになってしまう

しかし、それを素早くAが支えると、顔を上げさせ、自分の着物に目を向けさせた

『綺麗な着物でしょう？この日の為に、選んだんですよ。目立ちやすいように、そして…』

Aは短刀を取り出すと、一気に咲目の喉元を切りつけた

赤い紫吹が、着物に降り掛かる

『貴方の血が解らないようにする為。これで、美しいままで、居られるよ。』

確実に息が止まっている咲目に、そう告げたAは何事も無かったように、部屋を出ると、大きな声で叫ぶ


『大変だ！主犯が亡くなっている！』

その言葉と同時に、Aは血のついた苦無を咲目の元へ投げた




数分後、到着した役人に咲目の遺体が連れて行かれ、ひとまず安心の雰囲気が漂ったが、仙蔵ただ一人が神妙な顔でAに伺った

立花「A、あの男を最初から操っていたんだろ。」

『バレた？』

立花「何となく感じた。しかし、心理操作が上手いのは、頼りになるな。」

怪しげに笑う仙蔵にAも、微笑む


たとえ、長年の付き合いだとしても、その人がどれほど恐ろしいかまでは、分からない

日常の生活の中でも、親しい誰かに操られているかも知れないのだから


『捉えた相手は、逃さないからね。』

〜

飴末さん、ありがとうございました！

侵食、の段→←裏まで見えない、の段９

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す