検索窓
今日:1 hit、昨日:2 hit、合計:76,619 hit

プレリュード:kwkm ページ20

'


Aがあいつと付き合ってることは知っていた。
なにせそれを一番初めに報告されたのは紛れもなく俺だ。



俺が引き合わせたのに。
こんなに好きで、ずっと近くにいて。
あいつにAは似合わない。
早く別れればいいのに。



報告されてから今の今までずっと思い続けてきた。
口ではおめでとうだとかなんだとか言うけれど、好きな奴の幸せをひたすらに願えるほど俺は大人じゃない。


仕事終わりに悶々とそんなことを考えながらマンションのエントランスまでたどり着くと、目線の先で見覚えのある姿がぽつんと立ち尽くしていた。


「……A?」
「たくろー…」


弱々しい声で呟かれた自分の名前に少しどきりとする。


「どうしたん、」


ふらふらと近寄ってくるAの肩を支えながらとりあえず中に入ると、俯いたままのAが消え入りそうな声で呟いた。


「別れた、の」





……実際、片思いの相手が別れたと聞いて、どういう反応をするのが正解なのか。
喜ぶのは違う、かといって一緒に悲しむのもおかしいだろう。


何も言えないままとりあえず手を握ってみると拒否されなかったので、これは間違ってはいないようだ。


「なんで、別れたん、」
「分からない……でも、なんとなくこうなる気はしてた」
「でも、つい最近まで旅行行っとったやん」
「まだ大丈夫、だと思ってたときに、計画立てたから、」


途中からついに泣き始めたAを思わず抱きしめる。

ぐすぐすと聞こえる声にあわせて頭を撫でながら、あいつに勝ったとかやっぱりとか思うのは、あまり褒められたものではないのかもしれない。


「寒いし、とりあえず俺の部屋行かん?」
「……うん、」


最初よりも少し温まった手を掴んで歩き出す。
おぼつかない足取りでついてくるAはまだ泣いている。




俺なら泣かせない
幸せにする
Aが好きだ



そんな台詞を口にするタイミングについてばかり考えながら、古びたエレベーターに二人で乗り込んだ。


.

For you!:sgi→←砂上の楼閣:izw



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (62 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
200人がお気に入り
設定タグ:QK , QuizKnock , 短編集
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

キタ(プロフ) - あんころさん» ありがとうございます!キャラが定まってない感じもありますが大丈夫でしたでしょうか…?どうしても不定期になってしまいますが、更新の予定はありますのでまたよろしくお願いします(*^^*) (2020年4月6日 1時) (レス) id: 287acd08f7 (このIDを非表示/違反報告)
あんころ - kwmrさんだいすき人間なのですが、どれも好みどストライクでもう…!!!キタさんのペースで頑張ってください!応援しています!! (2020年4月2日 2時) (レス) id: 4b7a069960 (このIDを非表示/違反報告)
キタ(プロフ) - ぽさん» お返事遅くなってしまってすみません!一作目からありがとうございます。更新も不定期ですが、なんとかご期待に応えられるように頑張りますので、今後もよろしくお願いします。 (2019年12月9日 21時) (レス) id: 287acd08f7 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - キタさんお久しぶりです><「平凡、即ち人生」がドストライクすぎました、、!!キタさんの書く文章が大好きです:-)これからも応援しています。 (2019年12月5日 20時) (レス) id: 7700f16782 (このIDを非表示/違反報告)
キタ(プロフ) - ちるさん» コメントありがとうございます。沢山のお褒めの言葉をいただけてとても嬉しいです。マイペースにはなりますが、色々と更新していきたいと思います。今後もよろしくお願いします! (2019年10月31日 23時) (レス) id: 287acd08f7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:キタ | 作成日時:2019年10月29日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。