12話 ページ48
その週のとある平日、降谷とAは車を駐車場に停め、並んで歩いていた。
太陽の光に反射して輝く指輪を嵌めたAのその手には、ピンクのガーベラとカスミソウを基調とした可愛らしい花束が握られている。
付き合い始めてからの初デートにあたる今日この日が、まさかこの場所を訪れる事から始まるとは、なんとも自分達らしいと降谷は思った。
だが、何を隠そう、そこに行く事を提案したのは他でもない降谷だ。
横を歩くAに誘導され、降谷は水の入った桶を持って歩く。
しかし、周りの景色は徐々に見覚えのある景色に変わっていく。
まさか、という気持ちから、歩みを進める度に降谷の口数はどんどんと減っていった。
やがて辿り着く。
「ここに、兄が眠ってます。」
そこは、あの日、豪快に笑い、豪快なだし巻き玉子を披露した桜木Aの兄の墓石だ。
いそいそと作業を始め出したAの後ろで、降谷は1人佇んでいた。
無意識の内に、Aには聞こえない程の小さな声で、誰に言うでもなく呟いた。
「…驚いた。まさかこんな偶然が…」
一般的な墓石が立ち並ぶ一画
Aの兄が眠るその場所、その隣に
「もしかして、いずれこうなるって分かってたのか?景光」
降谷の幼馴染の墓石があった。
一通りの作業を終えると、今度は隣の墓石へと足を運ぶ。
降谷から事情を聞かされたAも、その偶然に思わず息を飲んだが”あちらは賑やかそうですね”と、すぐにその事実を受け止めた。
「え…」
2人並んでしゃがみ込み、手を合わせようとしたその時、Aが戸惑うように声をあげた。
「どうした?」
「この花…」
そう言ってAが指差した先には、可愛らしい小さな白い花が顔を覗かせていた。
「ブライダルベールっていうお花なんです。
暑さに弱いから中々日本では自生しない筈なのに…」
「ブライダルベール…」
Aはその花をそっと撫でた。
優し気な瞳には、たちまちうっすらと涙が浮かんでいった。
「零さん、このお花の花言葉は…」
「悪いが、先に車に戻っててくれるか?」
「悪い、お待たせ。」
「何をお話ししてきたんですか?」
「男同士の話だから秘密。」
「ふーん…ねぇ、零。」
「ん?…って、え、名前…」
「夜ご飯、何が良いかな?」
「たまに洋食は?俺も手伝うよ。」
「じゃあ…ハムサン」
「却下」
「えええ…」
「ああ、そうだ…花束を1つ作って欲しいんだ。」
【ガーベラ(ピンク)&カスミソウ:感謝】
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虎鉄(DC一時お休み中)(プロフ) - 休校さん» 休校様、返信遅れて申し訳ありません!コメント有り難う御座います(^^)上から目線だなんてとんでもない!感想だけでも嬉しいのに、面白いと言って頂けて本当に感激です。この作品は特に、言葉を大事にしたのでより嬉しいです!また読んで貰えると跳んで喜びます笑。 (2020年6月20日 10時) (レス) id: 4e898d55ea (このIDを非表示/違反報告)
休校 - とても素敵でした!今まで降谷さんのお話をはしごしてきたのですが、一番面白かったです。(上から目線不快に思われたら申し訳ない! 本当に、本当に、言葉といい、センスといい、ストーリーといい、弟子にしてください笑また、見にきさせていただきます。お疲れ様です (2020年6月15日 21時) (レス) id: e4ab2b5df5 (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - 藍さん» 夜分遅く&返信遅くなり申し訳ありません。テーマは幸せ、だったのでそう感じて頂けて何よりです!文字数多くて読むの大変だったかと思いますが、それにも関わらず感想を下さり、本当にありがとうございます!これからも頑張れる様に頑張ります!笑。 (2019年5月13日 1時) (レス) id: f628ddcf07 (このIDを非表示/違反報告)
藍(プロフ) - 読ませて頂きました!とっても綺麗なお話で、最後の幸せすぎる展開にお恥ずかしながら涙しちゃいました…笑これから続編も読ませていただくのですが、どうしても感想を伝えたくて仕方がありませんでした!これからも頑張って下さい!応援してます(*´ω`*) (2019年5月6日 23時) (レス) id: 8bfd8d1747 (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(プロフ) - ノンノンさん» 勿論覚えております^_^コメントありがとうございます!桜木美咲…!桜の木が美しく咲く、すごく日本らしくて素敵な名前に、自分でちょっとグッジョブと思ってしまいました笑。ノンノン様のコメントで私は幸せな気持ちです^_^本当に感謝です! (2018年8月2日 2時) (レス) id: e9fa573a9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年7月6日 0時