90.壊れてる ページ44
-Kunigami side-
「は……A、それ……」
思わず、声が零れてしまった。
今俺が見ているものが何なのか分かる筈なのに、それを受け入れたくない。
『……!これは……な、何でも無い』
Aは、慌てた様子で首元を隠した。
どう見ても、何でも無い態度では無いのは一目瞭然だ。
その痕に千切も気付いたのか、僅かに動揺しながらもAを見る。
「誰かに……手を出されたのか?」
『そ、そう言う訳じゃ……』
Aは目を逸らしながら、歯切れが悪く否定も肯定もしない。
前から思ってたけど、Aは嘘をつくのが苦手だ。
こんな様子を見せられたら、何も無かっただなんて思える訳無い。
Aは隠したがっているが―――恐らく、あいつだ。
「兄貴だろ?それを残したの」
真っ直ぐに見つめて問い掛けると、Aは瞠若した。
やっぱり、な。
『何で……』
「お前を直ぐに追い掛けて行ったのは、兄貴だけだったからな。そんな事が出来たのは、あいつぐらいだ」
「は……?兄貴って……実の兄貴が、妹にこんな事したのかよ?」
千切は、益々目を丸くする。
かなり困惑しているみたいだが、信じたくないって気持ちが強いんだろう。
それはそうだよな。
好きな女に手を出したのが実の兄貴だなんて言われたら、絶望以外何でも無い。
「Aの兄貴、心底お前に執着してるみたいだな。お前を自分に依存させて、離れて行かない様に繋ぎ止めるぐらいに」
『……!』
あの夜、Aが話していた内容を思い出しながら告げた。
初めて聞いた時は動揺したが、それ以上に怒りが湧き出た事を覚えている。
Aの全てを支配しているのだと知って、情けないぐらい嫉妬したんだ。
「……A、本当か?」
千切が、恐る恐る問う。
それに顔を歪めたAは、何も言わずに顔を俯かせた。
Aは痕がある首元を気にする様に触ると、次第に重苦しい口を開く。
『次の試合、
「サッカーを……?」
『そうしたら……私が選ぶのは、自分だけになるからって』
何だよ、それ……。
あいつは、妹の夢を潰してでもAを支配しようとしてるのか。
薄々気付いてはいたが、俺以上に壊れてるな、
巫山戯んな―――。
「なら、死んでも勝つぞ」
『え……』
そう簡単に、思い通りに行かせて堪るかよ。
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こはね(プロフ) - ほんとに冗談抜きで今までのブルロの作品で1番好きです!笑こんなに私のドストライクの作品に出会えてほんっっとに嬉しいです〜!! (5月12日 15時) (レス) id: 1bc7951b1f (このIDを非表示/違反報告)
Banri - poyocooooooさん» コメントありがとうございます!私の作った話をどう評価されるのかいつも気にして投稿しているので、コメントを読ませて頂いてとても自信を持つ事が出来ました!これからもよろしくお願いします! (4月26日 17時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
poyocoooooo(プロフ) - 玲王との関係が私の妄想(笑)と完全一致で展開されすぎていて最新話を読んで鳥肌がたちました😍毎話ドキドキしながら読ませていただいています!他の方も書かれていますが、ほんとに星を一度しか付けられないのが悔しいですが、何度も押してます!! (4月26日 5時) (レス) id: 7859abe11c (このIDを非表示/違反報告)
Banri - MaOさん» コメントありがとうございます!やっと玲王君との絡みを出せたと安心していたんですけど、早く他のキャラとの話も書きたいとウズウズしています笑。どのキャラとどう関わっていく事になるのか、楽しみに待って頂けたら嬉しいです! (4月25日 19時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
Banri - shionさん» コメントありがとうございます!今回の話は悩んで作ったので、喜んで頂けてとてもホッとしています笑。コメントはいつでも受け付けているので、これからも気軽にして頂けると嬉しいです!今後もよろしくお願いします! (4月25日 19時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Banri | 作成日時:2024年2月16日 19時