８２.ありがとう ページ36
第７試合チームW対チームZは、４ー４で試合が終了した。
勝利とは行かなかった。
でも、この引き分けは勝ちに等しいと言っても過言では無い。
雄叫びを上げて、皆で抱きしめ合うチームZ。
どうなる事かと思ったけど、何とか生き残る事が出来て良かった。
「千切！」
ゴールを決めた千切君の元に駆け寄る潔君。
彼の姿を見た千切君は少し驚いた様に、『潔……』と呟いた。
「凄ぇよ、その足！！」
興奮気味に歓喜する潔君。
千切君の事情を知っていたから、余計に嬉しいのだろう。
「お前のせいだぞ」
千切君は、小さな声で告げる。
「お前見てたら熱くなって、気が付いたら走ってた」
地面に目を落としながら、千切君が言った。
その言葉に潔君は、『え……』と目を開き、ポカンとする。
「怪我する前の無敵の俺はもう居ないけど、サッカーを失う怖さを知って……それでもまだ熱くなる俺が、今の俺だ。俺は走るぞ。この足が壊れるまで、この熱が尽きるまで」
そう話す千切君は、今までが嘘みたいにスッキリとした顔付きだった。
この試合で、彼の中の何かが変わったのかもしれない。
今の千切君を見ていると分かる。
彼はきっと、もう大丈夫だ。
「おう、一緒に戦おうぜ」
千切君に手を差し出す潔君。
だけど千切君はその手を掴まず、『一緒に？』と問い返した。
「勘違いすんな、ノロマ。世界一になるのは俺だ！！」
千切君は、潔君の手を握り返しながら宣言する。
そんな千切君に、潔君は嬉しそうに笑った。
「御影」
潔君から視線を外した千切君が私を見る。
『どうしたの？』
こちらに歩み寄ってくる千切君に問う。
目の前で足を止めた千切君は、その瞳を僅かに揺らして私を見下ろした。
「お前には、ちゃんと礼を言っておきたかったんだ。俺は、お前の言葉に救われた。俺の本当の気持ちと向き合う事が出来た。全部、お前のお陰だ」
千切君は、真剣な表情だった。
そんな言葉、私には勿体ないぐらいだ。
でも―――
『私の方こそ、ありがとう。もう１度、夢を追い掛けると決意してくれて』
笑みを浮かべて告げると、千切君は大きな瞳を更に開いた。
そして出てくる感情を全て呑み込んだ様に目元を緩めた千切君は、私の背に腕を伸ばして優しく抱き締めた。
割れ物を扱う様な、宝物を触る様な、そんな抱擁。
「ありがとう……A」
その声は、私の耳元で心地良いぐらいに響いた。
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Banri - こはねさん» コメントありがとうございます！１番好きだと言って頂けるのは、何よりの励みになります！これからも好きだと言って頂ける様に、更新頑張りますね！今後もよろしくお願いします！ (8分前) (
レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
こはね(プロフ) - ほんとに冗談抜きで今までのブルロの作品で1番好きです！笑こんなに私のドストライクの作品に出会えてほんっっとに嬉しいです〜！！ (5月12日 15時) (レス) id: 1bc7951b1f (このIDを非表示/違反報告)
Banri - poyocooooooさん» コメントありがとうございます！私の作った話をどう評価されるのかいつも気にして投稿しているので、コメントを読ませて頂いてとても自信を持つ事が出来ました！これからもよろしくお願いします！ (4月26日 17時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
poyocoooooo(プロフ) - 玲王との関係が私の妄想（笑）と完全一致で展開されすぎていて最新話を読んで鳥肌がたちました😍毎話ドキドキしながら読ませていただいています！他の方も書かれていますが、ほんとに星を一度しか付けられないのが悔しいですが、何度も押してます！！ (4月26日 5時) (レス) id: 7859abe11c (このIDを非表示/違反報告)
Banri - MaOさん» コメントありがとうございます！やっと玲王君との絡みを出せたと安心していたんですけど、早く他のキャラとの話も書きたいとウズウズしています笑。どのキャラとどう関わっていく事になるのか、楽しみに待って頂けたら嬉しいです！ (4月25日 19時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Banri | 作成日時：2024年2月16日 19時
