81.千切豹馬 ページ35
-Chigiri side-
『千切君!ボール拾って!』
御影の声に、俺の身体が勝手に動く。
潔が敵チームから奪ったボールを咄嗟にトラップした。
その瞬間、ガッと荒々しく肩が掴まれる。
「どけ!」
いつもの潔からは想像が出来ない程の気迫。
その姿に何も言えず、唖然としている内に、潔は俺を投げ捨ててボールを奪って行った。
『出して、潔君!』
御影の声に気付いた潔は、他の誰にも出さなかった癖に、御影には直ぐにパスを回した。
やっぱり潔にとって、御影は特別みたいだ。
だけど、今はそんな事どうでも良い。
「俺に『どけ』だと?巫山戯んな……」
何だよ、
このまま負けりゃ終われるのに、サッカー諦めて楽になれるのに。
嗚呼、クソ……何で俺は―――今更、熱くなってるんだよ。
―――『千切君は、今の自分に満足してるの?』
してねぇよ、満足なんて出来る訳無い。
―――『諦める理由を見つけようとしてる時点で、千切君は諦めたくないって思ってるんだよ』
ああ、そうだよ。
俺は諦めたくない、この足でまだ走っていたい。
俺が怖がってたのは、天才じゃなくなる事?
右足が壊れる事?
2度とサッカーが出来なくなる事?
何だよ、それ。
本当はそんな事、どうだって良かったんだ。
失くしちゃいけないのは、信じなきゃいけないのは―――今、御影達を見て熱くなってる、この俺の滾りだ。
『……!』
加速を付けて走り出すと、その気配に逸早く気付いた御影と目が合った。
出せ、御影。
『千切君……』
少し目元を緩めた御影は、俺に向かってパスを出した。
こんな時だって言うのに、今更になって御影の優しさを痛感する。
―――ありがとう、御影。
御影からのパスは、どんなボールでも必ず受け取ってみせる。
何があろうと零したりしない。
「クリア!終りょ……」
久遠がボールを蹴ろうと構えた。
その背後から、スピードを落とさずに忍び寄る。
「どけ」
ボールを取って、加速を続けた。
まだだ。
もっと、もっと、誰にも追い付けないぐらい速く。
もしゴールが奪えたら、俺の足がまだ壊れなかったら、その時は、もう1度夢を―――。
爪先数十センチ。
俺の全てを懸けて蹴ったボールは、ゴールに突き刺さっていた。
内側から、細胞全てが震える。
「うおらぁ!!」
見ろ―――これが、千切豹馬だ!!
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こはね(プロフ) - ほんとに冗談抜きで今までのブルロの作品で1番好きです!笑こんなに私のドストライクの作品に出会えてほんっっとに嬉しいです〜!! (5月12日 15時) (レス) id: 1bc7951b1f (このIDを非表示/違反報告)
Banri - poyocooooooさん» コメントありがとうございます!私の作った話をどう評価されるのかいつも気にして投稿しているので、コメントを読ませて頂いてとても自信を持つ事が出来ました!これからもよろしくお願いします! (4月26日 17時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
poyocoooooo(プロフ) - 玲王との関係が私の妄想(笑)と完全一致で展開されすぎていて最新話を読んで鳥肌がたちました😍毎話ドキドキしながら読ませていただいています!他の方も書かれていますが、ほんとに星を一度しか付けられないのが悔しいですが、何度も押してます!! (4月26日 5時) (レス) id: 7859abe11c (このIDを非表示/違反報告)
Banri - MaOさん» コメントありがとうございます!やっと玲王君との絡みを出せたと安心していたんですけど、早く他のキャラとの話も書きたいとウズウズしています笑。どのキャラとどう関わっていく事になるのか、楽しみに待って頂けたら嬉しいです! (4月25日 19時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
Banri - shionさん» コメントありがとうございます!今回の話は悩んで作ったので、喜んで頂けてとてもホッとしています笑。コメントはいつでも受け付けているので、これからも気軽にして頂けると嬉しいです!今後もよろしくお願いします! (4月25日 19時) (レス) id: 4def71807c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Banri | 作成日時:2024年2月16日 19時