30、ホワイトデー ページ30
3月。
流行り出したインフルエンザをかいくぐり、無事に高校受験を終えた。
結果に不安は感じつつも、受験から解放された教室内は、これまで以上に明るく賑やかだった。
そして、卒業式を明日に控えた、3月14日。
まだ半分瞼が開かないまま、テレビの中でリポーターがおすすめのお菓子を紹介する様子を観ながら朝ごはんを食べ。
「行って来ます」いつも通り、家を出た。
女の子に対して、シャイな川島の事だから。
チョコレートのお返しなんて、ゼロに近いほど、期待はしていなかった。
だから、通学途中にある小さな公園で川島の姿を見付けた時は、本当に驚いた。
「……ウソ…」
立ち止まった私に気付いた川島が、『こっちに来て』と言うように手を動かしている。
思わず周りを見渡した。
誰もいない。
私…で、合ってる…?
ドクン、ドクン。
私の胸が鼓動を強めていくのがわかった。
川島の家からは反対方向となるこの場所。
一気に期待を膨らませながら、彼の元へと急いだ。
周りから見えにくい、大きな木の裏に向かい合った時
「こ、これっ!!」
川島がカバンから箱を取り出した。
「これって…」
恥かしくてなんて言ったらいいかわからなくて、とりあえず口を開いた私に
「いいから!早くしまって!いいから早く!」
凄い剣幕で捲し立て、そのまま学校の方へと走り去ってしまった。
「……え」
な、なに…???
小さくなっていく川島の後ろ姿。
私の手には綺麗に包装された箱がひとつ。
間違いない。
バレンタインのお返しだ!!
私は綺麗に包装された紙を破かないように気を付けながら、急いで箱を開けた。
「……わぁ…」
マグカップだ。
箱の中には、可愛い白くまの絵が描かれた、マグカップが入っていた。
そして、そのマグカップの中に、小さなアメがぎっしり詰まっていた。
「〜〜〜〜〜っ」
嬉しすぎて、意識がどっかに飛んで行っちゃいそう。
この日からこの白くまのマグカップは
私の宝物になった。
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作者名:ユチコ | 作成日時:2018年7月1日 12時