9、6人部屋 ページ9
それから函館の観光名所であるトラピスチヌ修道院や函館山などを回り、大きな老舗旅館に着いた私たちは、夕食、お風呂を済ませ部屋に戻った。
部屋は和室で、仲良しの子ばかりが揃った6人部屋。
「あたしココに寝る〜」
いの一番に寝場所を決めたのは、中二の時に隣町から越して来た智美だった。
器量が良い…と言える子ではないけれど、抜群のユーモアセンスで、いつも周りを爆笑の渦に巻き込む子。
だから彼女の周りは常に人で溢れていた。
今日もオチがしっかりついた話で私たちを笑わせた智美が
「で??」
と、話を美香に向けた。
「高野とは、いつから付き合ってるのよ?」
根掘り葉掘り聞きたがる私たちに、顔を赤らめる美香。
「え〜、なによ急に」
幸せそうな彼女の声に、何故か昨日のみじめな自分が重なった。
あ…ヤバイ。
目頭が熱くなり、慌てて立ち上がった。
「あ!お風呂場にタオル忘れて来たみたい!取ってくるね!」
「ドジだね〜」
「早く行っておいで」
「うん!」
こんな顔、誰にも見せたくなくて
みんなに見られないように、急いで部屋のドアを開けた。
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作者名:ユチコ | 作成日時:2018年7月1日 12時