48、借りたパーカー ページ48
誰もいないって
それって、今この家に
私たち、ふたりっきりってこと…？
「だから大丈夫。…洗った方が良くない？」
「あ、うん」
そうだね、そうなんだけど。
気にしてるのは、私だけ…？
「乾燥機、１時間くらいで乾くと思うから。
あっ、それまでこれでも着てて」
そう言って、ベッドの上に無造作に置かれていた川島のパーカーを手渡された。
「あ、りがとう…」
受け取った私を見ながら「着替えたら教えて」と部屋の外に出てくれた川島。
ま、マジですか。
掌が冷たいのは、緊張からか、雨のせいか。
ドアの向こうに川島がいることを意識しながら急いでスカートのファスナーを下ろし、まるで早業のように、借りたパーカーに着替えた。
「わ、どうしよう」
少し大きめのパーカーだけど丈が全然足りてない…。
「これでいいか」
仕方ないからさっき借りたバスタオルを腰に巻いた。
「じゃあ…お願いします…」
ドアを開けて汚れてしまった服を出すと、受け取ってくれた川島が勢いよく１階へと降りて行った。
……一体なにをしてるんだ、私は。
好きな人の家で訳の分からない格好をして…。
やっぱり傘を持って来るんだったな…。
どんより落ち込んでいると階段を上ってくる音がして、川島が部屋に戻って来た。
その時、川島の後ろに何か小さなものが動いた。
「……えっ、なに」
え、犬？
茶色のミニチュアダックスが、川島の後ろからテコテコと部屋に入って来たのだ。
わぁぁぁぁぁ！
「可愛いーーーーっ!!
え、犬飼ってたんだ!?｣
「うん。名前、ココア」
「ココアちゃん！」
まん丸の目で、キョトンと私を見ていたココアちゃんが、ゆっくりと私に近づき、体を摺り寄せて来た。
「わぁ〜！｣
ヤバイヤバイ！めちゃくちゃ可愛いっ!!
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作者名：ユチコ | 作成日時：2018年7月1日 12時
