47、大雨 ページ47
約束の日曜日。
その日は朝から曇り空だった。
「雨、降るかな…?」
家を出る時、傘を持っていこうか迷って
でも、なんとか大丈夫だろうと予測して。
手土産に、昨日買っておいた美味しいと評判のお店のシュークリームを持って家を出た。
やっと川島に会える。
それだけが楽しみだった数日間。
浮かれた足取りで川島の家に向かっている時だった。
───ポツン。
ひとつの雨粒が頬を濡らした。
あれ。やっぱり降ってきちゃったかな。
ちょっと急ごう…と、思った矢先に
ザ――――――――ッ
いきなりバケツをひっくり返したような大雨が降って来た。
「ひえぇぇぇぇ〜〜〜〜っ」
『雨』なんて言葉で片付けちゃいけない。
『大雨』
『豪雨』
『スコール』
このくらいの表現が適格だってくらいの雨。
川島の家はもうすぐだ。
雨宿りをする…といった選択肢がなかった私は、目に入ってくる雨を拭いながらとりあえず川島の家まで必死に走った。
「ちょ…っ、ちょっと待って……っ」
私を見るなり慌ててタオルを持って来てくれた川島。
「ごめんね、ありがとう」
久々の再会を喜ぶ余裕もないまま、タオルを受け取り、びちゃびちゃに濡れた顔や髪を遠慮なく拭いていく。
「こんなに雨が降ってくると思わなくて…」
言い訳しながら、そっとリビングの方に目をやった。
川島のお母さんが出てくる気配は、なさそう。
良かった〜。だってこんな姿、なるべくなら見られたくない。
「とりあえず入って」
前回同様、2階の部屋に案内してくれた川島の後をついて行くと
部屋に入るなり、彼がくるりと振り返った。
「…服、乾燥機で乾かす?」
川島の視線の先を追うように自分を見て、「げっ」心の声が洩れた。
こ、これは酷い。
昨日から何を着て行こうかめちゃくちゃ悩んで、やっと選んだ私のお気に入りのシフォンスカートが、跳ね返った雨水のせいで、びちゃびちゃのドロドロに汚れていた。
う、わ…最悪だ…。
「ううん、大丈夫。タオルだって借りたのに、これ以上迷惑かけられないし」
恥かしくて、下を向いたまま笑って誤魔化してたら。
「大丈夫。今、誰もいないから」
「え?」
川島から予想外の言葉が返って来た。
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作者名:ユチコ | 作成日時:2018年7月1日 12時