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『よくぞ参られた、カレア・シトリア』
重々しくその名を口にしたのは、立派な椅子に腰かけるやたらと偉そうなおじさんだった。誰この人。オウサマ? 対して、玉座の数段下には、カレアは黒衣をまとって、赤絨毯の上に堂々と立っていた。
『御前だぞ! 膝を突け!』
臣下っぽい人が顔を真っ赤にして怒る。カレアの敬意がない態度に苛立っているみたい。
『……』
無表情に視線を王から臣下に移すカレア。彼はその目の冷たさにたじろぐ。
『な、なんだその目は。無礼な……』
『まぁいいだろう? キーク。彼女は偉大な研究者だ。それくらい許してやろうではないか』
クックッ、と面白そうに笑う王。何がおかしいんだろう。
『……陛下がそうおっしゃるなら』
キークと呼ばれた家臣は渋々引き下がった。
『さてシトリアよ。ついに完成したそうだな』
『えぇ』
たったそれだけ答えて、カレアは右手を前に突き出した。掌を上にして、何事か小さく呟くと、ボォッと炎が出現した。
『おぉ……』
その現象に感嘆の息を漏らす王。臣下も驚きに目を見張っている。
『これは"魔法"よ。覚えれば大抵の者には使えるわ』
『このような摩訶不思議な力を、誰でもか?』
『そうよ』
フッと炎を消し、手を下ろす。コツ、と一歩近づいて、不敵に微笑んだ。
『この力をあげるわ』
悪魔的な囁き。場が一瞬にしてカレアに支配される。先程、跪かない事に怒っていた奴も、雰囲気に呑まれてカレアが敬語じゃない事に気付けていない。
『……素晴らしい』
やがて、王が満面の笑みで称賛した。
『その技術は、世界を変えるだろう。それを発明したそなたはまさしく稀代の天才!』
『ふふっ、そうね、世界を変えるつもりで創ったもの』
『ふむ、これは褒美を……いや、褒美以上の物を与えねばな』
王がしばらく考えるように手を顎にやる。
『そうだ、特別な名前、なんていうのはどうだ? 家名と自分の名以外の名を持つ事を許されるのは、この国では我ら王族のみだ。この上なく名誉だろう?』
この辺りで思い出した。これは歴史で習った事だ。そうでなくてもお伽噺のように語られている話。魔法の誕生と、それを発明したカレアが王から特別な名前を貰う、という……あぁ、カレアとは、魔法の創造主だった。すっかり忘れていた。
『……ありがたいことね』
『そうだろう、そうだろう。では、その名は……"マギアノ"にしよう。今は失われたサフニータ族の言葉で、意味は』
『賢者、ね』
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たまご(プロフ) - めっちゃ面白かったです!アスラ君、大好きでした! (2019年9月26日 7時) (レス) id: 4b6840f9b9 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - チェシャ猫さん» ありがとうございます(*^^*) アスラ君、好きになってもらえて良かったです! (2019年3月24日 2時) (レス) id: a49b6f3827 (このIDを非表示/違反報告)
チェシャ猫(プロフ) - 完結おめでとうございます!いやぁ、めでたしめでたしですね!!アスラ君最後まで大好きでした!お疲れ様でした!! (2019年3月23日 15時) (レス) id: 0582223455 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - なななさん» あなたの事は知ってますよー。コメントどうも! (2017年5月5日 21時) (レス) id: c03204db58 (このIDを非表示/違反報告)
ななな - すっごくおもしろいです!!!!! めつちゃ最高(*゚▽゚*)更新楽しみにしてまふ(( (2017年5月5日 14時) (レス) id: b05e83a60b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:寒極氷化(かんごく ひょうか) | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/orazu/
作成日時:2016年4月26日 0時