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「っ」
 声を出そうとして、自分が息を止めていた事に気付いた。一度息を吸って、また吐き出す。そうして目の前の人物に声をかけた。
「何がおかしいんだよ、おにーさん」
 セレンは今し方暗闇が消失した空間を見つめ、不気味に、されど美しく、笑っていた。
「ははっ。目の前の結果にどうしても喜びが湧き上がってしまうんだよ。少し粗があるのは仕方ないにしても、成功したんだから、"時越え"に。不老不死の根幹に使われていたのは、限定的に個人に使える時戻しの魔法。そのベクトルを外側に向け、さらに世界規模にして、尚且つ使用者を1人だけに」
「どうでもいいけどさ、」
 セレンの話を遮って、ボクは座り込んだ。周りの惨状を見る。
「こいつら、どーしちゃったわけ?」
 あの"衝撃波"に傷ついた物体はない。ただ、アイツは暗闇の消滅と共に崩れ落ち、隊員達はまだ静止している。
 ボクにつられたのかセレンも座り込んで、話を遮られた事に気分を悪くした様子もなく、説明し始めた。
「……さっきの魔法は、不老不死の魔法を基にしているからね。マイカはその魔法の魔具だろう? きっと魔法の完了に引きずられて、気絶したんだろうね」
「じゃあ、あいつらは?」
 と、隊員達を指す。
「あの人達は……んー、たぶん衝撃波の影響と世界の混乱のせいかな」
「世界の混乱?」
「うん。あの魔法は大き過ぎた。世界にかなりの衝撃を与えたんだよ。世界を擬人化してみると、今まで虫に刺された程度のものだった魔法が、いきなり殴ってきて、混乱したって感じかな。生物や自然はこの世界の根幹で繋がっていると考えられているからね。その混乱に巻き込まれたわけだよ。つまり、最初は衝撃波で思考と身体が停止して、続けて世界の混乱で停止継続。世界が立ち直るまで、静止したままだと思うよ」
「ふ〜ん」
 なかなか分かりやすかったけれど……1つ納得できない事がある。
「何で、ボクらはこうして動いてられるわけ?」
 問うと、セレンはいつもの困ったような笑みを見せた。
「……人間から、というより常識から外れちゃったからかな……僕やマイカは言わずもがな。君もそうなるために人間を辞めたんじゃない?」
「……」
 思わず黙った。人間を辞めた。確かにそうだ。ボクはほぼ不老、セレンに至っては不老不死だ。
「世界の法則から外れたその時点で、世界とのリンクが切れちゃったんじゃないかな」
「……成程ね」
 じゃあ、今この世界で動いているのはボクとセレンだけか。

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作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
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たまご(プロフ) - めっちゃ面白かったです!アスラ君、大好きでした! (2019年9月26日 7時) (レス) id: 4b6840f9b9 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - チェシャ猫さん» ありがとうございます(*^^*) アスラ君、好きになってもらえて良かったです! (2019年3月24日 2時) (レス) id: a49b6f3827 (このIDを非表示/違反報告)
チェシャ猫(プロフ) - 完結おめでとうございます!いやぁ、めでたしめでたしですね!!アスラ君最後まで大好きでした!お疲れ様でした!! (2019年3月23日 15時) (レス) id: 0582223455 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - なななさん» あなたの事は知ってますよー。コメントどうも! (2017年5月5日 21時) (レス) id: c03204db58 (このIDを非表示/違反報告)
ななな - すっごくおもしろいです!!!!! めつちゃ最高(*゚▽゚*)更新楽しみにしてまふ(( (2017年5月5日 14時) (レス) id: b05e83a60b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:寒極氷化(かんごく ひょうか) | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/orazu/  
作成日時:2016年4月26日 0時

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