〜111〜 ページ14
鳴りやまない警報と止まらない地震に、治安部隊本部はパニックに陥っていた。
「先輩先輩! 国中でセンサーが反応したって、誤作動なんですかね!?」
オレは自分でも分かる程情けない顔をして、頼れる先輩、すなわちシェイド・ラシュアン捜査官に縋りついた。先輩は渋い顔つきだ。
「お前も隊員だろ。しっかりしろ。あと、誤作動じゃない」
「ですよね!? 誤作動だったら良いのに! この地震も嘘だったら良いのに!」
「それは全員が思っている。今はできるだけ平静を保って、指示を待て」
その言葉通り冷静な様子の先輩が、何だか悟りを開いた超人に見えてきた。
「よくこの状況でそんな事が言えますね!? 流石過ぎます!」
「……お前、普段そんなキャラだったか?」
その時、バンッ、と部屋の前方で大きな音がした。上官がこちらの注目を集めるために机を叩いた音だった。
シン、と静まり返る空間。
「各センサーの反応値を調べた結果、この森に近いセンサーほど、その値が大きい事が分かった。おそらく、この森のどこかでこの国中のセンサーが反応する規模の巨大魔法が使われている。この地震との関係性は不明だ」
この揺れの中、よく噛まずに言えたなと思う。エリートは違うなぁ……ってそんな場合じゃない! そのエリート捜査官が指差した森が、どう考えても前に捜査した曰く付きの館がある場所だったのだ。
「先輩、あの森って……」
「あぁ、分かっている。十中八九、あの洋館に関係しているだろうな、この事件は」
「てか、事件って規模じゃなじっ……く、噛んだ……」
「そんな事もある。それより、あの館に行くぞ。あそこには同僚達が別件ですでに向かっているだろう? そしてこの巨大魔法を使っているのが館主だったら、あいつらがその魔法に巻き込まれているかもしれない」
やはり先輩は冷静だ。オレは全くその可能性に頭が回っていなかった。まだまだ未熟だと実感させられる。
上官も先輩と同じ考えに至ったようで、指示を飛ばしている。どうやら、館へ向かうチームとそれ以外を捜索するチームとに分かれるようだ。前者のチームの人数の方が多いようだから、この上官は、あの館が関わっている可能性が高いと考えているのかもしれない。
オレと先輩は館へ向かうチームだった。
「気をつけろよ。下手しなくても死ぬかもしれないからな」
本部を出る時、先輩がそう忠告してきた。その時一瞬見えた顔は、先輩らしくない冷徹さがあった……気がした。
17人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
たまご(プロフ) - めっちゃ面白かったです!アスラ君、大好きでした! (2019年9月26日 7時) (レス) id: 4b6840f9b9 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - チェシャ猫さん» ありがとうございます(*^^*) アスラ君、好きになってもらえて良かったです! (2019年3月24日 2時) (レス) id: a49b6f3827 (このIDを非表示/違反報告)
チェシャ猫(プロフ) - 完結おめでとうございます!いやぁ、めでたしめでたしですね!!アスラ君最後まで大好きでした!お疲れ様でした!! (2019年3月23日 15時) (レス) id: 0582223455 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - なななさん» あなたの事は知ってますよー。コメントどうも! (2017年5月5日 21時) (レス) id: c03204db58 (このIDを非表示/違反報告)
ななな - すっごくおもしろいです!!!!! めつちゃ最高(*゚▽゚*)更新楽しみにしてまふ(( (2017年5月5日 14時) (レス) id: b05e83a60b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:寒極氷化(かんごく ひょうか) | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/orazu/
作成日時:2016年4月26日 0時