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「我が儘?」
セレンの言葉に、こてんと首を傾げるアイ。動作が前より幼くなっている気がする。
「うん、そう。計算はさっき終わった。初めてする事だから、少し甘いかもしれないけど……現状できる最適解は、これしかない。手伝ってくれるかい?」
未だ、これから何をするか説明する事はせず、それでいてセレンはアイに協力を求める。
「んー、良く分かんないけど、それがセレンの我が儘なら、私は付き合うよ」
だけどアイは、ニコッと無邪気すぎる笑みを浮かべ、一もニもなく頷いた。
嫌な予感が膨れ上がる。
「……ねぇ、おにーさん、何やるか知らないけど、それ絶対止めた方が良いよ」
セレンがこちらを見つめた。
「!」
欲を滲ませた表情だった。その欲はおそらく、知識欲と呼ばれるもの。かつて一度だけ……シキの国でアイツが力を暴走させた時……荒れ狂う"魔女"見て、浮かべていたモノと同じ笑み。
「そうだったね。アスラは、先見の才能があったんだよね。これから起こる危機の度合いも、起きる事が理解できていなくても、分かるんだ」
「……そういうおにーさんは、全部分かっていて、やろうとしてるんだ? 最悪な上に最低だね」
「ん! セレンは最悪でも最低でもないよ!」
「……おねーさんは、何を聞いてたの……」
アイが会話に入ると、どうも危機感をなくしそうになる。それはアイに危機感というものがすでに欠落してしまったからかもしれない。
「さて」
セレンの視線が再びアイに向けられる。右手はまだ"魔女"の手を掴んだまま。そしてその"魔女"も硬直したままだ。
不気味な笑みを湛え、セレンは告げる。まるでシリアス感のない、日常会話のように。
「起動」
ゴッ、っと原因不明の風が巻き起こった。発生地は"魔女"。館全体が揺れ、窓ががたがたと震える。……いや、震えているのは地面も……!?
その時、玄関の方で、ガラスの割れるような音がした。不安定な床で必死にバランスを取りながらそちらを見ると、シールドを破壊し、しかし、この事態にどうすべきかと取り乱している隊員達がいた。……この国で地震はめったに起こらないから、あいつらはこれが初めての経験なのかもしれない。それに、拒絶論なんて頭の片隅にもないだろうから、セレンのしている事とこの地震が結びつかないんだろうね。だから、あいつらにとって、2つの異常事態が同時に起きている事になる。
……でも事実は、これら全ての異常をこの"天才"が起こしている。
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たまご(プロフ) - めっちゃ面白かったです!アスラ君、大好きでした! (2019年9月26日 7時) (レス) id: 4b6840f9b9 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - チェシャ猫さん» ありがとうございます(*^^*) アスラ君、好きになってもらえて良かったです! (2019年3月24日 2時) (レス) id: a49b6f3827 (このIDを非表示/違反報告)
チェシャ猫(プロフ) - 完結おめでとうございます!いやぁ、めでたしめでたしですね!!アスラ君最後まで大好きでした!お疲れ様でした!! (2019年3月23日 15時) (レス) id: 0582223455 (このIDを非表示/違反報告)
寒極氷化(プロフ) - なななさん» あなたの事は知ってますよー。コメントどうも! (2017年5月5日 21時) (レス) id: c03204db58 (このIDを非表示/違反報告)
ななな - すっごくおもしろいです!!!!! めつちゃ最高(*゚▽゚*)更新楽しみにしてまふ(( (2017年5月5日 14時) (レス) id: b05e83a60b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:寒極氷化(かんごく ひょうか) | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/orazu/
作成日時:2016年4月26日 0時