俺が恋をしたのは片足がない人だった。【高尾和成】

じゅうはちの障害 ページ19

未銅さんはお兄さんの腕につかまって立ってみせた。
……立った！？
呆然としている俺に、

「もう一生車いすでいてやる！って思ってリハビリしてなかったんですけど、ちょっと頑張りました。」

すごいでしょ？なんて言う彼女の嬉しそうな顔。

「早く行って来い。遅れるぞ。」

お兄さんにせかされ、映画館へと向かった。

彼女は俺の腕に自分の腕を組み、やや遅めに歩いている。
見ただけならカップルに見えるかもしれないが、思った以上に大変だった。
俺がちょっと引いたり、早くしたりするだけでふらふらする。

「ごめんなさい、遅くて。」
「だいじょぶだって。時間はたっぷりあるからさ。」

俺の横の彼女は、いつもよりも可愛くて。
彼女からすれば支えになってるだけだろうけど、俺の心臓は鼓動を早めるばかりだった。
駅の階段は特に難所で、一段一段時間をかけて上った。
その間中、彼女は俺の腕をがっちりとつかんでいた。
まあ、それもドキドキの塊だったわけだが。

映画館に着くと、できるだけ下の方の席にした。
上の方に行くためには、階段を上る必要があるからだ。
缶コーヒーとオレンジジュース(お兄さんと違ってコーヒーは飲めないらしい)を買って席に着いた。

映画が始まると彼女はくぎづけになり、いつもは見せないくらいに興奮していた。

「この俳優さん、かっこいいですよね。」

小声で彼女がつぶやく。
となりに男が、それも君の事を好きであるこの俺が居るのにもかかわらず、なんてことを……。
俺はちょっとムカついて、彼女の膝の上に置かれていた手を握った。

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