俺が恋をしたのは片足がない人だった。【高尾和成】

じゅうごの嘘 ページ16

先週の俺の心配は本当にならずに済んだらしく、次の週には奥の席で本を読む彼女の姿があった。
手元には『恋のタイムリミット』という本。
確か今、実写映画になって放映してるんじゃなかったか。

「うはぁ……。」

今まで聞いたこともないほどの深いため息をつく彼女。

「どうしたんすか？」

そう聞くと、さらに深いため息が漏れる。
どうしたんだろう。
彼女は机におでこをグリグリとこすりつけながら、

「どうしても見たいんです……この映画。」

と本をズイッと突き出してくる。
超感動作なんですよー、なんて言って、口をとんがらせている。可愛いなコノヤロー。

「お兄ちゃん、彼女と見に行ってきたらしいんですよ。」
「彼女！？」
「え？あ、はい。だってもう二十代後半ですからね。いなきゃ困りますよ、逆に。」

あんなシスコ……妹思いの人に彼女がいたなんて…。
しかも二十代後半！？まだ十代だと思ってたんだけどな。

「それで、『面白かったぞ』なんて言いながらニヤニヤ笑うんです。」

眉毛をきゅっと上に押して、お兄さんのまねをする。
なかなか似てるな、なんて考えながら、俺はあることを考える。

俺が映画に連れていけばいいじゃん！！
いやでも、大変だろうしな…。

「しょうがないので、DVDが出るまで待ちます。でもやっぱ見たいー……！！」

そんな悲しそうな顔をされると、男の気はころっと変わる。

「じゃあ、俺が連れてったげる。」

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