ルトリアングル2

君との出会い。冬 ページ44

「寒くないの？」




寒いよ




この世界は僕にとって、酷く冷たくて寒い






「お家はどこ？送るよ」






家と言われれば、ジスとジュニと住んでいるあの家しか僕にはないけど






「帰る場所がないの？」






あそこには、もう戻れない




戻りたくない…




あそこに戻れば、僕は強くあり続けなければならない




そんな不安に怯えながら送る日常なんてもう繰り返したくない







「とりあえず私のお家に来る？そこだから」







最初は、都合のいい子だと思ってたんだ





彼女はきっと僕のことを知らないから





利用するにはちょうどいい





彼女も他の女の子と同じですぐに捨ててしまおう





その時まではそう思っていた







「あなた、名前は？」






何も答えない僕に彼女は「チョンサ」という名前をつけた






理由は、天使に似ているからって







「悪魔」とばかり呼ばれていたから






その名前はあまり馴染みがないものだった。






彼女には、僕が天使に見えているんだ






そんな彼女がひどく滑稽にみえた







「ほら、チョンサ、ベッドに行って」






ぼんやりとした意識の中





ふと気づくと女の子が僕の腕を引っ張っていたので
思わずその手を弾いてしまった






宿を与える代わりに





君も僕に何かを求めるんでしょう？





今まで出会ってきた女の人達はみんなそうだったけど





この世にはギブアンドテイクという言葉がある






君は僕に何をしてほしいの





でも彼女は






「怖いの？」





そう僕に尋ねた。




君の方こそ




僕が怖くないの？







「風邪ひかないようにね。おやすみ」






彼女は、僕の首に何重もマフラーをして、何枚も布団を被せて寝てしまった。





こんなんじゃ、重くて苦しいだけなんだけど・・






僕は寝付いた彼女をしばらく観察していたけど、いつの間にか僕も眠っていたらしい






気づくと朝の10時過ぎ






部屋を見渡すけど彼女はどこにもいない






制服を着ていたから学生だと思うけど、学校に行ってしまったのかな






そもそも、知らない男に家を預けて出て行って大丈夫なんだろうか






そういえば、あの子以外の家族は？






一人暮らしの女の子が住んでるアパートにしか見えないけど






あの幼さで






彼女もここに一人ぼっちだったんだろうか…

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