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235.冷たい額に ページ35

煉獄家に戻ると、

 千寿郎くんが膝をついて泣いていた。


 そのすぐ側には杏寿郎さんの鎹鴉の要が俯いている。


 私は後ろからそっと千寿郎くんを抱きしめた。


「Aさん…兄上が…」


「うん。」


「…亡くなったなんて…そんなっ」


「…うん。」



 心が痛くて、辛くて、涙は止まってはくれない。





 その様子を槇寿郎さんが遠くで見ていた。




 啜り泣く音だけが響く煉獄家は、

 太陽を無くした世界のようで

 ひどく暗く、寂しいものだった。







 私は縁側に座り、ぼうっと空を見ていた。

 日は高く昇り、つがいの鳥が空を飛んでいる。




 私が重い腰を上げて居間へ行くと、

 千寿郎くんが泣き疲れたのか眠っていた。



「昼餉、今作るからね。」



 台所へ向かい、昼食の支度を始めた。


 作るものは、杏寿郎さんが大好きなもの。



 ちょうど料理ができた時だった。



「…ごめんください。」



 私が玄関へと向かうと、そこには隠の方々が来ていた。


「失礼します。

 こちらは炎柱様の生家、煉獄家に間違いありませんか?」


「はい。」



 返事をすると、隠の方々は涙目になりながら話をしてくれた。



「…立派な最期だったとお聞きしています。

 無限列車で下弦の壱を倒した後、

 どうやら突然、上弦の参が現れたようです…。」


 隠の方々は声を詰まらせながら続ける。


「上弦の鬼は鬼舞辻の血がより強く、

 柱3人分の強さに匹敵するとか…。

 煉獄様はそれを1人で押す勢いだったとのこと。」



「…そうでしたか。」



「誰一人として、犠牲者は出なかったようです。」



 その後、隠の方々は彼の自室へと棺を運んでくれた。



 そっと棺を開けると、


 愛する人の亡骸がそこにはあって…


 やっぱりまだ受け入れきれなくて…



 優しくその頬に触れてみた。



「…冷たい。」



「…杏寿郎さん、たくさんの人々を守り抜いたのね。


 やっぱりあなたはすごい方です。


 痛かったでしょう。

 
 苦しかったでしょう。」


 私は杏寿郎さんの額にそっと口づけを落とした。


「…ほら、痛みをとるおまじない。


 痛いの…痛いの…飛んでいけっ…」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
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 泣きながらお話を更新しています。

 折れそうになる私の心の支えです…。

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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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狐姫(プロフ) - sayaさん» sayaさん、ご感想をありがとうございます!一気読み嬉しいです〜!勿体無いお言葉まで…感謝の気持ちでいっぱいです。。ぜひ、他の作品でもお待ちしておりますね!最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。 (10月20日 19時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
saya(プロフ) - はじめまして!キュンキュンしたり、切なくなったり、ホワホワしたり、で一気読みしてしまいました。とまりませんでした。このお話と出会えてよかったです。他の作品もこれから読まさせて頂きます!! (10月19日 23時) (レス) id: 7154e48ffe (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - もにょさん» もにょさん、最後までお読みいただき、そしてコメントをしてくださり、ありがとうございます!最高な作品だなんて…幸甚の至りです!またいつでもお越しくださいね。 (2023年5月6日 8時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)
もにょ - ハンカチがびっしゃびしゃになる程泣きました。甘く切なく幸せな夢をありがとうございました。最高な作品に出会えて幸せです。長編お疲れ様でした! (2023年5月6日 4時) (レス) @page48 id: c62f6d1e54 (このIDを非表示/違反報告)
狐姫(プロフ) - 桜月夜さん» 桜月夜さん、感想ありがとうございます!感動してくださるなんて光栄です!素敵なお言葉までありがとうございます(*˙˘˙*) (2021年11月19日 17時) (レス) id: 12299479a5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狐姫 | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/kohime_yume  
作成日時:2021年11月5日 19時

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