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「はい、シナモン2つどうぞ〜」

『ありがとうございます!』



自分の分のチュロスもちゃっかり買って

伏黒の待つ場所へと戻る。



その道中、ふわふわと風に揺れる
手元の風船が視界に入った。



どこか夢心地に揺蕩(たゆた)うそれが
いまだ心の底に残る、現実味の無さを掻き立て





夢なら、まだ覚めないで…





そっと心のうちに願い、笑みをこぼす。







やがて視線を風船からはずすと
少し遠くのベンチに座る伏黒へと向けた。


その距離は少し遠く。
お互いの姿も小さく、顔もよく見えない。

しかし、何故だかパチリと
お互いの視線が交差した気がした。





なに?早く来いって??
伏黒姫はお腹を空かせて待ってますって??


いまだ外されない視線に
私はやれやれと頭を振り、手元のチュロスを落とさないよう細心の注意を払いながら駆け出した。


私は初めて
己の中に秘めたる下僕魂を感じた。










ふと視界の端に
自分の持つ風船とは色違いのものが
上空にゆらゆらと登っていくのが見えた。



『あらら...だれか風船離しちゃったのかな』



きょろきょろと辺りを見渡すと、

数10メートル先で、男性の腕に抱かれながら
泣いている子供がいた。


その小さな手は届くはずのない空へと伸ばされ
必死で風船を辿っている。





《たかが風船で泣くんじゃない》

《可哀想だけど…ママとパパも届かないの、ごめんね》



どこか呆れたような
子供をあやす声が聞こえた。






その一連の出来事にふと既視感を覚えると


突如として
テレビの前で親に向かって泣きじゃくる
幼い自分の姿がフラッシュバックした。




 





“ヒック…なんで、おともだち、を…作っちゃダメなの…?1人はつまんないよぉ…うぇーーん”


“友達なんていなくても、ほら。パパもママもいるぞ”


“可哀想だけど…これもAのためなの。ごめんね”




テレビには、友達と冒険するアニメが流れている。

たしかこの主人公たちに憧れ、
親に友達が欲しいと縋り付いた時の記憶…


物でしか叶えられることのない自分の境遇に
初めて涙した日だったと思う。



 




私はその記憶から抜け出す頃には


後先なんてものを考えもせず、

心の赴くまま

その親子のもとへと走っていた。

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アイコ(プロフ) - 漁灯火さん» あたたかいコメントありがとうございます! (2021年2月6日 11時) (レス) id: 311881f587 (このIDを非表示/違反報告)
漁灯火(プロフ) - はじめまして!夢主の健気さに胸が締め付けられます!続き楽しみにしてますね!無理しない程度に更新ファイトです!応援してます! (2021年2月6日 2時) (レス) id: d674c68738 (このIDを非表示/違反報告)
アイコ(プロフ) - あ ま ね 。さん» ありがとうございます!頑張ります( ´ ▽ ` ) (2021年2月6日 0時) (レス) id: 311881f587 (このIDを非表示/違反報告)
あ ま ね 。(プロフ) - はじめまして!最高です!更新楽しみにしてます!!!! (2021年2月5日 23時) (レス) id: 36c644cd03 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アイコ | 作成日時:2021年2月4日 0時

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