ヒーローに捧ぐ【伏黒恵】

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生まれた時から、
私の命の終着点は決まっていた。






封印される16歳のその日まで


【生きのびること】


ただそれだけが私の使命だった。




　


外界から隔てるように築き上げられた高い壁は



【器】としての私が

どれだけ大切に育てられたかを物語る。






人はそれをみて、
哀れみそして可哀想だと囁いた。




しかし幸いなことに、
私は両親には恵まれていたことから

そこまで己を悲観的に見ることなく
健やかに育った。





命に関わらないことであれば
望みはなんでも叶う世界。



やりたいこと、食べたいモノ、欲しいもの__



この限られた短い人生で
なるべく多くの経験ができるように、と


両親はただ私の幸せを願ってくれていた。





しかしそんな優しい人たちでも

唯一、頭を縦に振らないことがあった。





【友達がほしい】という願い事である。







いずれ死ぬ時になるべく寂しくないように、
外界との関わり合いはもつべきではないという


悲しくも切ない親心から


ごく一部の使用人を除いて

私は人との交流を、一切遮断されていた。







高い塀の中
ごくわずかな使用人と家族とだけ過ごす日々。



それは決してつまらなかったわけではないが


しかし時折TVでみる
青春ドラマや恋愛ドラマに魅せられて

【友情】というものに想いを馳せることも少なくなかった。


器としての自覚と
普通の生活への羨望。



決まり切っている答えに対して
しかし、諦めがつくことは絶対になかった。



　
　




だからこそ



《3日後、A様による封印の儀を執り行います》



突然訪問してきたスーツの男に告げられた日


　




『ごめんね、みんな……』



　



そっと夜中、周りの目を掻い潜り

長年模索し、編み出した

屋敷の外への抜け道を使うと







はじめて、外界へと飛び出した。




　




3日後には、必ず戻るから。



　

だからどうか神様。




この3日間だけは





悔いのない最期を、私にください。

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