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やがて、その手に安心を覚えたのか
宿儺は口を少し開け
ぽつりぽつりと、言葉を連ねはじめた。
宿「…大人になるということは、また一歩…
俺は死に近づいたということだ」
お前と違って、人間は死ぬからな。
淡々と告げられるその声は少し掠れていて
なるほど。珍しく寂しがっているのか、と
私は場にそぐわない感想とともに
心の中でほくそ笑んだ。
しかし、そんなことは少しも感じ取らせぬよう
それで?と、促すように髪を梳いてやる。
宿「現に、この数年で俺はでかくなったのに対して、お前の姿は何一つ変わっていない。
……流れる時間が、あまりにも違いすぎる」
いつのまにかうっすらと開いた宿儺の目と
視線が交わる。
その目は、どうしようもないもどかしさを
私に訴えているようだった。
まだ子どもらしい
愛いところも多少は残っていたか。
その姿が、なんとも小さい頃の宿儺に重なり
愉快で仕方ない。
私は感情に押し負け、ついニヤリと意地悪く笑い
額に口づけを落とすも
宿儺はそれを嫌がりもせず
大人しく受け入れた。
『なんだ、そんな当たり前のことを気にしてたのか。…坊のいう通り、こうしてお前はすぐに老いて、一瞬で私の前から消えてしまう。しかしそれは人間が皆
辿る道だ』
そう、神と人間はちがう。
この聖域に居ようと、所詮宿儺も人間だ。
寂しいが、その
だからこそ、人間のように
私たちは今ある時間を愛おしく
大切に生きねばならない。
『だから坊、今ある時間を「ならば」…』
宿「ならば俺が神になれば、永遠にお前の側にいられるのか?」
『…神になる、と?』
宿「ああ、そうだ。本でも、人間から神になったという話も読んだぞ」
いつになく真剣な彼に、
ゴクリと生唾を飲み
どう返せばいいものか、と空を仰いだ。
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アイコ(プロフ) - 薊さん» ありがとうございます、村人については激しく同意です(小並感) (2021年1月12日 17時) (レス) id: 311881f587 (このIDを非表示/違反報告)
アイコ(プロフ) - 白狐さん» ありがとうございます!頑張ります(°▽°) (2021年1月12日 17時) (レス) id: 311881f587 (このIDを非表示/違反報告)
薊 - すごいですね…(語彙力低下)これからも頑張って下さい!後、村人は許すまじ。 (2021年1月12日 12時) (レス) id: 0f20c8237d (このIDを非表示/違反報告)
白狐(プロフ) - 続き楽しみです! (2021年1月11日 21時) (レス) id: f345edd9e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:アイコ | 作成日時:2021年1月7日 16時