悪魔祓いと白い息 8 ページ9
「……君もずっとここにいる訳にはいかない」
見るな、と二度言った私の言葉を無視し、凄惨な地獄に変わり果てた「家」を彼らはしっかりと目に焼き付けていた。
少年の細く小さな手を取ろうとすると、彼は酷く怖がった様子で制止させるように私の手を跳ね除けた。
目の前で起きた事が信じられないのか、私への畏怖がどんどん募っていっているのが見て分かる。彼のアイオライトの様な瞳に映っている物は巨大な恐怖だけだった。
彼は私の隣を通り過ぎて、倒れた少年だったものに近づいていく。どんどんと、砂は消えていく。そうして、彼の表情は絶望に埋め尽くされていった。
「あ、あ……」
彼はうわ言のようにそう繰り返す。なんで自分の大切な物を壊したんだ、と。言わんとしていることは嫌でも分かってしまう。それは初めてのことではないから。瘴気の塊が少しずつ無くなっていく。
「……行こう。あまり見ないで、ほら、シャークんも」
そう言い終わる前に、少年はぼろぼろと金剛石のような涙を零し叫ぶ。
「なんで！ ぼく、ぼくのだいじなっ、なんで、全部とってくの！ だいじょうぶって言ったじゃん！」
「かえして！ かえしてよ！！」
少年は崩れ落ち、慟哭する。真っ黒な瘴気の塊を見てから、また視線を私に戻し、憎しみを帯びた言葉を浴びせ続ける。
手中の拳銃は未だに白い息を吐いていた。
「ごめん。こんな言葉で許してくれるとは思わない。それでも、ごめんね」
声を上手く発せられているか、分からなかった。これは初めてのことでは無い。私は職務を全うした、それだけだった。しかし人の命を奪っているのなら、悪魔と何が違うのか？ 呼吸する度に命が削られる感覚がした。
悪魔祓いは基本、重宝される職種にある。失敗すれば自らが悪魔憑きか、運が悪ければ悪魔そのものになる私達は、他に替えがきかない。我々は代替品のない盾ということだ。
そんな私達の事を虐げ嫌う者もいる。一つは悪魔崇拝者。そしてもう一つは、身内が悪魔祓いに祓われた者達。愛した人を失う悲しみは大きく、それを子どもが経験するとなると、強い精神を保つのは難しい。その恨みが大切な人を奪い取った者に向くのは、何もおかしくなどない。
「私のことは、好きなだけ罵倒しなさい」
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葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。世界観は特にこだわっておりますので、そう言って頂き本当に嬉しいです。明日以降もたくさん楽しんでいって下さい。 (2023年3月28日 22時) (
レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - まずは、4章までの更新お疲れ様です。世界観の作り込みが本当に細かく、一話毎に感想を伝えられないのが残念です(笑)お体にお気をつけてください！更新楽しみにしてます。 (2023年3月28日 20時) (レス) @page42 id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉、大変励みになります。実は雪の降る頃は非公開でしたので、まだ読めなかったんです……季節外れですが、楽しんで頂ければ幸いです。今後も頑張ります！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - とても読みやすい文章で、心情の表現や描写も素敵です！雪の降る頃に見つけられなかったのが悔やまれます(笑)陰ながら応援しています。更新頑張ってください！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄 | 作成日時：2021年5月13日 17時
