悪魔祓いと白い息 6 ページ7
少年は大人しげに垂れた大きな目をさらに目尻が裂けるほど見開いて、不安げに私を見つめる。長いまつ毛がぱちぱちと瞬きをする度に揺れた。迷ったような素振りを見せてから、彼は恐る恐る頷いた。
「あ、の……ごめんなさい。おかね、かえすね」
頷いてから彼は眉を八の字にして今にも消え入りそうな声で言った。どうやらシャークんの言ったことは本当だったらしい。私が少年の頭を撫でると彼は遠慮気味に微笑した。
そう多く入っている訳でもないのだが、しかし子どもの手を汚させる訳には行かない。シャークんにありがとうと言うと、彼は得意げな顔をした。
「それと……あのね、あくまのこと、知ってるかも……」
「こっちだよ」
少年に連れられ辿り着いたのはじめじめとした陰気な路地裏だった。ドクダミを筆頭とする雑草特有の香りが鼻腔を刺激する。少年はその小道をずんずん進んでいく。この子も誰かさん同様に野良猫みたいだ。
貧民街を思い出したのか、どこか寂しげな表情を浮かべるシャークんの手を引きながら何とか私も路地を抜ける。
その先には子どもの秘密基地のような小屋が、半分傾いた状態でポツンと建っていた。薄汚れた木製の壁は寂しげにそこに佇んでいる。
その家らしき物からは黒く淀んだ気体が漏れ出しており、悪魔の発生源である事は目に見えてわかった。シャークんもどこか警戒したような顔をしている。少年は不安げに私を見つめるばかり。
拳銃に退魔の弾薬を入れ、ポケットには魔石を潜ませた。ゆっくりと扉に手をかけようとする。
「あのさ！ その……だいじょうぶだよね？」
「大丈夫だよ。私が君を守るから」
私は少年にそう言うが、それでも彼は顔を曇らせたまま、下を向いてしまった。
「そのまま見ないでいた方がいい。シャークんも、下を見て、私が逃げろと言ったらすぐ逃げなさい」
悪魔憑きは、一般の人間にもその存在を認知する事が出来てしまう。人間世界への干渉の強さによるもの、やら、悪魔憑きも元は人間であるから、などと言われているが、真相は分からない。
私は再度扉に向き直り、ゆっくりと木製のそれを引く。悪魔祓いやそれに準ずる者にしか分からない、悪魔の甘ったるい匂い。シロップのそれにも似ているが、それと混じった腐敗臭に、残念ながら気分が良いとは言えない。
「……だぁ、れ？」
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葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。世界観は特にこだわっておりますので、そう言って頂き本当に嬉しいです。明日以降もたくさん楽しんでいって下さい。 (2023年3月28日 22時) (
レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - まずは、4章までの更新お疲れ様です。世界観の作り込みが本当に細かく、一話毎に感想を伝えられないのが残念です(笑)お体にお気をつけてください！更新楽しみにしてます。 (2023年3月28日 20時) (レス) @page42 id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉、大変励みになります。実は雪の降る頃は非公開でしたので、まだ読めなかったんです……季節外れですが、楽しんで頂ければ幸いです。今後も頑張ります！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - とても読みやすい文章で、心情の表現や描写も素敵です！雪の降る頃に見つけられなかったのが悔やまれます(笑)陰ながら応援しています。更新頑張ってください！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄 | 作成日時：2021年5月13日 17時
