Ep.4 〇るすばんだいぱにっく！ na br sh ページ46
*4章5話から7話までの時間軸
「おれたちって、このいえのへやぜんぜん見てなくね？」
そう言い出したのは、翡翠色の瞳の少年。家主のいないお屋敷は、子ども達にとって絶好の探検場所。
「たしかに！ いっぱいおへやあるのに、なにがあるかわかんないもんね〜」
「みんなで、見にいってみる？」
そう言う二人の瞳も、期待に満ちた無邪気な色をしている。宝探しをするように、秘密基地を見つけるように、身近な輝きに胸を膨らませる彼らは、その過酷な生い立ちを想像させない。普通の子どもだった。
「あ、じゃあさ、ついでにそうじもしたら、マスター喜んでくれっかな」
「え、いいね！」
「そうしよ！」
サプライズを計画して、恩返しの気持ちを確かめ合う。三人の内緒の大作戦が始まった！
「よし！ たんけんとそうじ、やるぞー！」
「「おおー！！」」
「じゃあ、まずはこの部屋から……」
水色の瞳の少年がドアノブに手をかける。そこはお屋敷の一階、他の部屋から少し離れた場所にある。ドアノブには他よりも丁寧な装飾が彫られており、どことなく豪勢で威圧感を発している。息を飲んで扉を開く。
「「わぁ……！」」
「ピアノだ！！」
部屋はそれほど広くないが、質の良いアップライトピアノが備えられている。少々埃を被っているものの、ピアノの黒色が絨毯のボルドーを反射していた。
「マスターって、ピアノひけるのかな……」
「わかんねぇ、けど、おれはここに来るまえにはひいたことあるよ」
「え！ ぼくもなんだけど！」
「ほんとに！？ ちょっとひいてみてよ」
言われた二人は、少しの間顔を見合せて、知っている曲の譜面を探し始めた。部屋の棚の中から、簡単な練習曲の本を引っ張り出してくると、二人は四角い椅子にくっついて座る。水色が後ろで見守る中、小さな演奏会が開演したのだった。
拙いながらも繊細な音色。たどたどしくもどこか力強い音。数年ぶりに奏でられたピアノは、息を吹き返したように、子ども達に負けないエネルギーを持った美しい音を奏でた。
「二人ともすごい！！」
たった一人の観客は、目を輝かせる。譜面を飾る音符たちが舞った。ところどころに混ざる不協和音さえも、芸術だった。一人分の拍手だけれど、それはホールを埋める喝采よりも大きく思える。
そんな子ども達だけの秘密の探索は、まだ始まったばかり。
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葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。世界観は特にこだわっておりますので、そう言って頂き本当に嬉しいです。明日以降もたくさん楽しんでいって下さい。 (2023年3月28日 22時) (
レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - まずは、4章までの更新お疲れ様です。世界観の作り込みが本当に細かく、一話毎に感想を伝えられないのが残念です(笑)お体にお気をつけてください！更新楽しみにしてます。 (2023年3月28日 20時) (レス) @page42 id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉、大変励みになります。実は雪の降る頃は非公開でしたので、まだ読めなかったんです……季節外れですが、楽しんで頂ければ幸いです。今後も頑張ります！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - とても読みやすい文章で、心情の表現や描写も素敵です！雪の降る頃に見つけられなかったのが悔やまれます(笑)陰ながら応援しています。更新頑張ってください！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄 | 作成日時：2021年5月13日 17時
