Ep.3 ■PM11:59 kn ページ45
時計の針がかちりと音を鳴らして動く。それ以外の全てが止まったように、部屋は静けさで満ちていた。明かりの落ちた暗い空間。一人の子どもが、縮こまりながら毛布に
「はやく、かえってきて……」
ぽつりと言葉を零す少年の、深い青色の瞳が不安げに揺れる。夜も更けた。子どもはもう寝る時間だよ、なんて、彼に声をかける者はない。星さえも、彼を慰めることは出来なかった。
どん。ばん、がたん。
音が響く。音がする度、少年は耳を塞ごうと毛布を強く掴んだ。こわい。だが、何が恐ろしいのか、彼にはまだ分からない。ただ漠然とした恐怖が、彼に囁いた。
なんでたすけてくれないの？
びくりと震えた。彼の身体に残る鬱血痕が、どくんどくんと拍動を速める。自分の心臓の音が、よく聞こえた。
「い！ おねがいします、やめて！ ぅ、やめてください！」
今度は声が響く。高い子どもの声が、少年の鼓膜を揺らした。いやだ。だが、彼は自分のいやだという気持ちを受け入れたくなかった。ただ強い拒絶が、彼を責め立てた。
はやくたすけにきてよ。
はぁ。呼吸が荒くなる。はぁはぁ。頭が割れるように痛かった。聞きたくないものが、次々と耳に入っては苦しめ、少年の傷を抉っていく。目に溜まった涙は、流れる前に拭ってしまった。目尻が赤く擦れる。
「ごめん、ごめん……」
十二時に魔法が解けるお姫さま。十二時に痛みが解ける友だち。十二時、十二時まであとちょっと。焦燥感で砂になってしまうように思えた。音が止む。自分の鼓動の音だけが、頭を壊してしまうほどに、聞こえてくる。
こんなに夜更かしするなんて、悪い子になったみたい。そんなことを考える余裕はなくて。無邪気なままでいちゃ、パジャマの裾に足を引っ掛けて転んでしまう。熱を持った液体が、ほくろのついた頬を濡らした。
心の痛みが解けるのは、あとどれくらい先なんだろう？
暗い暗い宇宙の中で、落っことした希望を探す、哀傷と優しさのお話。
Ep.4 〇るすばんだいぱにっく！ na br sh→←Ep.2 ■スピカのきおく sm
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葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。世界観は特にこだわっておりますので、そう言って頂き本当に嬉しいです。明日以降もたくさん楽しんでいって下さい。 (2023年3月28日 22時) (
レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - まずは、4章までの更新お疲れ様です。世界観の作り込みが本当に細かく、一話毎に感想を伝えられないのが残念です(笑)お体にお気をつけてください！更新楽しみにしてます。 (2023年3月28日 20時) (レス) @page42 id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉、大変励みになります。実は雪の降る頃は非公開でしたので、まだ読めなかったんです……季節外れですが、楽しんで頂ければ幸いです。今後も頑張ります！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - とても読みやすい文章で、心情の表現や描写も素敵です！雪の降る頃に見つけられなかったのが悔やまれます(笑)陰ながら応援しています。更新頑張ってください！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄 | 作成日時：2021年5月13日 17時
