Ep.1 ■○はじめましてのよるに br sh ページ43
大きなベッドに子どもが二人。天窓から覗く暗い空を見ながら、横たわって内緒の話をする。星の輝きがきらきらとお互いの目に映り、それは約束の光になった。
「……ねぇ、シャークんは今までどうやって生きてきたの？」
「あぁ、まあ……やさしい人がメシくれるときもあったけど、ごみばこからさがしたりとか？」
「おなかすかないの？」
「ずっとはらへってた」
「あはは、だよね〜」
最初はそんな話。お互いの名前。食べるものが無かったこと。家の中にいても寒くて寒くて堪らなかったこと。ずっと少し寂しかったこと。
「でもぶるーくはさ、いっしょに住んでたんだろ？ アイツと……」
言いかけてハッとした顔で目線を外す。それは、大切な人を失うことの悲しみを、よく知っているからこそ。
「……うん。でもあの子、はじめて会ったときからうまく話せなかったから、名前も知らないんだ」
「……そ、っか。ごめんな」
「ううん。シャークんは？ かぞくはいるの？」
「おれは、おとうさんはせんそうにいっちゃって、おかあさんは……」
言葉が途切れる。エメラルドのような瞳にじわりと大きな涙が溜まった。それを隠すように、ぐし、と手で拭ってまた話し始める。
「おかあさんは、ころされた。あくまに。おれはにげて、きしゃにのってこっちに来た」
「……」
次はそんな話。大切な人のこと。平和を願うこと。暖かい家があること。今はやっと、少し幸せなこと。
「あの人さ、やさしいね」
「A……さんのこと？ おれもきのう助けてもらったばっかでさ、よくわかってないんだけど、でも会えてよかった」
「ぼく、こんなにおっきいおうちでくらせるなんて思ってなかったなぁ」
「おれも！」
顔を見合わせ、二人は笑った。それぞれの寂しさと悲しさを抱えながら、未来を想う。満天の星々は遠い場所から子ども達のことを見守っている。
「あ、そうだ。ぶるっくって呼んでいい？ その方が呼びやすいから……」
「いいよぉ、えへへ」
「なに？」
「あだ名でよばれるの、うれしくて。へへ」
「なんだよそれ……よろしくな、ぶるっく」
「よろしくね、シャークん」
はじめましてのよるは、星が綺麗で澄んだ夜。少し似ていて少し違う二人が出会った日の、秘密のお話。
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葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。世界観は特にこだわっておりますので、そう言って頂き本当に嬉しいです。明日以降もたくさん楽しんでいって下さい。 (2023年3月28日 22時) (
レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - まずは、4章までの更新お疲れ様です。世界観の作り込みが本当に細かく、一話毎に感想を伝えられないのが残念です(笑)お体にお気をつけてください！更新楽しみにしてます。 (2023年3月28日 20時) (レス) @page42 id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉、大変励みになります。実は雪の降る頃は非公開でしたので、まだ読めなかったんです……季節外れですが、楽しんで頂ければ幸いです。今後も頑張ります！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - とても読みやすい文章で、心情の表現や描写も素敵です！雪の降る頃に見つけられなかったのが悔やまれます(笑)陰ながら応援しています。更新頑張ってください！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄 | 作成日時：2021年5月13日 17時
