悪魔祓いと黒い夕焼け 10 ページ41
「君には、悪魔が見えるね？」
「そうだけど」
彼の身体を離し、懸念し続けていたことを問う。彼はすんなりと答えた。むしろ、彼にとってはそれは当たり前のことで、私の深刻さを驚いているようにさえ見えた。
「いつから？」
「え、わかんねぇけど。おぼえてるときはずっと」
物心着く前。先天的にその能力を持っていた？ 悪魔を知覚できる人間は存在しない。彼は、その常識を覆すのか？
「君は、生まれはどこだっけ。この街の近く？」
「いや、もっととおくの……デカいみずうみのそばのとこ。おれ、そこからきしゃで来た」
北部で最も大きな湖は、南北境界線にある。戦争によって多くが被害に遭ったままで、復興の手は未だ及んでいない。かつてより
「……ダンピール？」
「だんぴーる、ってなに？」
「悪魔と人間の混血種で、悪魔とは敵対関係にある。現代に残るダンピールは、人間の血の方が濃くなっているそうだけれど……」
目の前の彼を見据える。人並みを超える身体能力。悪魔を視認し、それを消そうとする義務感。故郷である湖。断定するのは危険だが、限りなくそれに近い。
「その種族なのかもしれないね」
「……おれのこと、いやになったってこと？」
いじけてそう言う彼の姿が、どこか愛らしく、どこか悲しかった。
「そんな訳ないでしょう？ 君が何者だろうと、君は君だよ」
「そりゃ、そうだけど」
……無理もないか。みんなを守る、と宣言したばかりの自分に、憎むべき相手と同じ血が流れていると分かったら。たとえ自身はそれを狩るものとして生きていても、自身に忌まわしさを向けてしまうかもしれない。
「私からは誰にも話さない。君が信頼できると思った人には、君から教えてあげてね」
「……うん」
「大丈夫、そんな悲しそうな顔をしないで。君は大丈夫だから」
「……」
感情の読み取れない表情で私を見る、シャークんの鮮やかな緑色の瞳が、一瞬赤色に光った。私のそれと、お揃いの色。悪魔の色。
彼が背を向けた窓から、角度のついた冬の夕焼けが彼の輪郭を照らし出す。それは、日食のように、奈落のように黒い、不吉な太陽だった。
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葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。世界観は特にこだわっておりますので、そう言って頂き本当に嬉しいです。明日以降もたくさん楽しんでいって下さい。 (2023年3月28日 22時) (
レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - まずは、4章までの更新お疲れ様です。世界観の作り込みが本当に細かく、一話毎に感想を伝えられないのが残念です(笑)お体にお気をつけてください！更新楽しみにしてます。 (2023年3月28日 20時) (レス) @page42 id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉、大変励みになります。実は雪の降る頃は非公開でしたので、まだ読めなかったんです……季節外れですが、楽しんで頂ければ幸いです。今後も頑張ります！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - とても読みやすい文章で、心情の表現や描写も素敵です！雪の降る頃に見つけられなかったのが悔やまれます(笑)陰ながら応援しています。更新頑張ってください！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄 | 作成日時：2021年5月13日 17時
