悪魔祓いと黒い夕焼け 9 ページ40
「よしよし、良いんだよ。元は手伝おうとしてくれたんだから。三人とも立派だね」
そう言うとBroooockまで泣き出して、もうそこからは手が付けられない。スマイルは、おい泣くなよ、と言って宥めているがあまり意味は無く、きんときもあーあー、と言っているだけで特に止める気は無い。泣かせるつもりは無かったが、愛しいみんなが分かってくれるまで、この思いを伝え続けよう。
その日の夕方。自室にいると、とんとん、と少し不慣れなノック音。扉を開けば少し真剣な緑色の瞳と目が合った。彼はどこか浮かない表情で、デスクの前の私に近づいてくる。
「あのさ……マスターがさいしょに見つけたのは、おれでしょ？」
「うん、そうだね」
見つけた、と言うと少し語弊があるような気もするが。
「……」
何やら言い出しにくいのか、俯く彼の顔がよく見えない。椅子から降り、屈んで彼に目線を合わせる。初めて会ったあの日と、同じように。
「なんて言うかさ……あいつらばっかズルいじゃんか」
「ずるい？」
「だって、いちばんはおれだったのに」
そう言うと、彼は上目遣い気味でちらりと私を見る。少し染まってふくれた頬。じっと見つめる翠玉は不満げに揺れている。
「みんな、だんだんさ、なんか……マスターに近いっていうか」
「うん？」
「今日だって、手ェつないでかえってきたじゃんか」
「そうだね」
「ぶるっくだって、なんかはなしたんでしょ？ すげぇニコニコしてへやかえってきたんだもん」
「……」
「スマイルなんて、きのうはコーゲキしてきたばっかなのにさぁ……おれだって、マスターによろこんでほしくて、そうじしようって言ったのに、うまくいかねぇし」
少し早口に、ぱちぱちと目を瞬かせながら言葉を紡ぐ。埃がきらきらと舞いながら落ちた。彼の言いたいことが分かってきた。つまるところ。
「そう……寂しかったんだね？」
「ば、ちっげーよ！！」
そうは言いつつも、真っ赤になった頬はまるで熟れた林檎のようで、今度は少し困ったような照れた顔をしている。純粋でかわいい、私が最初に見つけた子ども。
「素直に言ってくれたらいいのに」
「…………うん」
シャークんの頭を撫でると、先程の勢いを失って、微かな声で返事をした。他の誰よりも小さな身体を抱き締める。少し力を入れたら壊れてしまいそうなほど細い体躯。こんな身体で、私を助けてくれた。
「昨日は、助けてくれてありがとう」
「べつに……おれがたすけなきゃって、おもったから」
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葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。世界観は特にこだわっておりますので、そう言って頂き本当に嬉しいです。明日以降もたくさん楽しんでいって下さい。 (2023年3月28日 22時) (
レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - まずは、4章までの更新お疲れ様です。世界観の作り込みが本当に細かく、一話毎に感想を伝えられないのが残念です(笑)お体にお気をつけてください！更新楽しみにしてます。 (2023年3月28日 20時) (レス) @page42 id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉、大変励みになります。実は雪の降る頃は非公開でしたので、まだ読めなかったんです……季節外れですが、楽しんで頂ければ幸いです。今後も頑張ります！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - とても読みやすい文章で、心情の表現や描写も素敵です！雪の降る頃に見つけられなかったのが悔やまれます(笑)陰ながら応援しています。更新頑張ってください！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄 | 作成日時：2021年5月13日 17時
