悪魔祓いと黒い夕焼け 8 ページ39
家に帰ったのは昼頃。おかえりなさい、という声と共にBroooockとシャークんが慌てた様子で玄関に走ってくる。
「何かあったの？」
「ううん、なんでもない！ だいじょうぶだよ！」
……確実に何かあったときの口ぶりだが。
「Nakamuは？」
「……」
「あはは、ほんとになんでもないよ〜」
がしゃん！
突然、奥の部屋から何かが割れたらしい音が聞こえた。さては……
二人を見ると、露骨に目を逸らされる。どうやら、割れたのは今の一つだけでは無いらしい。
「危ないから、早く片付けないと。どいてくれる？」
「は、はい……」
部屋に入れば、粉々になった花瓶と必死にその欠片を集めるNakamuの姿があった。細く白い指が、深い赤色の血で濡れている。
「だめ、もうやめなさい」
「え、ぁ……マスター」
酷く焦って怯えた表情。収縮した瞳孔と硬直した身体は、初めて会った日と変わらない。
「良いんだよ、失敗したらそう言ってくれたら。怒ってなんかいないから」
「ごめんなさ……」
「痛かったでしょう？ 洗っておいで」
花瓶の破片を集める。所々、血痕が付着してしまっているものもあった。彼らの意識を変えるのにはまだ時間が足りていない。
「何があったのか、教えてくれる？」
花瓶だけではなく皿が数枚割れたことも分かってから、片付け終わって今に至る。ただでさえ小さな身体を更に縮こませた三人が、恐る恐る話し始めた。
「おれら、このいえのそうじしようとしてて、でもどうぐがどこにあるかわかんなかったから、さがしてたんだけど……」
「そしたらぼくが、おさらが入ってるたなにぶつかっちゃって……ごめんなさい！」
「ごめんなさい……」
言いながらNakamuの瞳からは涙が零れ、いたたまれない気持ちになる。きっとこれは彼にとって、絶対に犯してはならないミスだったのだろう。彼の元いた世界はそういう場所だったのだから。
「そうだったんだね。まずは、私からも謝らせて。皆だけにしてしまって、怪我をさせてごめんね」
「え、いやでも」
「良い？ お皿も花瓶も買い直せば良いの。でも、君達は替えがきかないでしょう？ 私にとって、君達が傷つくのが一番いや。それを分かっておいてね」
ゆっくりと、心を込めて話す。
「はい、マスター」
少し裏返った声でNakamuが応える。彼の涙を拭ってやれば、温い温度が伝わった。ごめんなさい、とシャークんがしゅんとした顔で言う。彼のそんな表情は初めて見た。
「もう隠さないで」
「……はい」
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葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。世界観は特にこだわっておりますので、そう言って頂き本当に嬉しいです。明日以降もたくさん楽しんでいって下さい。 (2023年3月28日 22時) (
レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - まずは、4章までの更新お疲れ様です。世界観の作り込みが本当に細かく、一話毎に感想を伝えられないのが残念です(笑)お体にお気をつけてください！更新楽しみにしてます。 (2023年3月28日 20時) (レス) @page42 id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉、大変励みになります。実は雪の降る頃は非公開でしたので、まだ読めなかったんです……季節外れですが、楽しんで頂ければ幸いです。今後も頑張ります！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - とても読みやすい文章で、心情の表現や描写も素敵です！雪の降る頃に見つけられなかったのが悔やまれます(笑)陰ながら応援しています。更新頑張ってください！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄 | 作成日時：2021年5月13日 17時
