悪魔祓いと黒い夕焼け 6 ページ37
「わ、」
「あっ、おいばか！」
凍った道に足を取られたきんときが、スマイルを巻き込む形で積もった雪に倒れ込んだ。髪やコートに付着した銀花が、陽光に照らされて輝く。アクセサリーいらず、なんてね。
「ふふ、ごめん」
「いったぁ、つめてぇし……」
「怪我はしてない？」
「まぁ、大丈夫だけど……」
二人に手を貸す。二人とも、少し躊躇いがちに、しかし確かに私の手を握って、控えめに笑い合いながら軽く雪を払い落とした。寒さを忘れてしまうくらい、内側が温まっていく。そんな不思議な感覚が、またほつりと沸いてきた。
「さて、次はきんときのお買い物だよ」
「じつは、何買うかもう決めてるんだ」
そう言う彼の目的は、有名スイーツ店が出している販売スペース。祝祭のケーキや焼き菓子がたくさんの、バターやアーモンドの香ばしい香りで満ちた場所だ。
「Nakamuはあまいものがすきなんだけど、あんまり食べさせてもらえなくて。だから……」
「良いよ。美味しいスイーツは欠かせないものだからね」
どのケーキも、ケースの中でめいいっぱいに輝きを放ち、まるで舞踏会の令嬢たちのようである。白いクリームに粉糖がかけられた銀世界。薄桃色の上に乗った真っ赤なイチゴとチョコレート。どれも芸術品の域に達しており、食べるのが勿体ないと思うほど。
「うーん、どれがいいんだろ」
「じぶんが好きなのにしたら」
「いやぁ、おれはあんまりあまいものとか食べたことないから」
食べたことがない、というのも、彼を取り巻いていた環境が招いたものだろう。それを聞いたスマイルは少し不思議そうに、ふぅん、と答えた。
少し迷ってから、きんときは大きな白いケーキを指さした。正方形のスポンジに生クリーム、艶やかなイチゴにはナパージュが塗られた、シンプルだが綺麗なケーキだ。
「これ、のでかいやつ！」
「え、そんな食えるの？」
「行けるっしょ！」
いたずらっ子のように屈託のない笑顔を浮かべるきんときは、年相応の無邪気さを見せている。
ケーキは祝祭最終日に家に届くよう手配し、一緒に買ったたくさんのアイシングクッキーを受け取った。
「大荷物になっちゃったね。もう転ばないように気をつけて」
「……そっちのふくろ、おれが持つ」
「本当？ ありがとう」
みんな、本当に優しい子どもだ。それでもいつの間にか、黒点のような隠し事が生まれて、大人になっていく。私も、その一人であるように。
「行こうか」
「うん！」
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葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。世界観は特にこだわっておりますので、そう言って頂き本当に嬉しいです。明日以降もたくさん楽しんでいって下さい。 (2023年3月28日 22時) (
レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - まずは、4章までの更新お疲れ様です。世界観の作り込みが本当に細かく、一話毎に感想を伝えられないのが残念です(笑)お体にお気をつけてください！更新楽しみにしてます。 (2023年3月28日 20時) (レス) @page42 id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉、大変励みになります。実は雪の降る頃は非公開でしたので、まだ読めなかったんです……季節外れですが、楽しんで頂ければ幸いです。今後も頑張ります！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - とても読みやすい文章で、心情の表現や描写も素敵です！雪の降る頃に見つけられなかったのが悔やまれます(笑)陰ながら応援しています。更新頑張ってください！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄 | 作成日時：2021年5月13日 17時
