悪魔祓いと黒い夕焼け 2 ページ33
スマイルが語ったのは、こんな話だった。廃教会に来る前は貴族の家で「飼われていた」が、その家が破産したために追い出された。その前のことは、ほとんど分からない。悪魔を従える方法は誰かに聞いたが覚えていない。魔術を使う度に、昔の記憶がだんだん消えていく。
……これは、禁忌の魔法を使ったことへの戒め。
魔法を扱う人間は、普通、魔力を代償にする。それが足りなかった分、記憶が勝手に補っていたと考えるのが妥当だ。体や脳に強い負荷がかかっているに違いない。ブローチは魔法を使う為の依代といったところだろうか。
「たぶん、家族から教えてもらったんだとおもう。なんとなくだからわかんねぇけど」
「家族……」
悪魔を従属させる人間。そんなの、悪魔崇拝者か、それとも……頭が痛くなる問題だ。
「君は、これからどうしたい？ 君にとって最善の選択をしよう」
「さいぜん、あぁ……最善……え？ おれをつかまえないの？」
「今はね。分からないことが多すぎて、どうしようもないよ」
私がそう言えば、彼は困惑しながらも考える素振りを見せる。しばらく沈黙が続いたあと、彼は言った。
「あいつらは、なんなの？」
スマイルは他の子どもたちを指さす。彼らは途中から飽きていたのか、私達から離れて廃教会の中をうろうろしたり、こそこそと話をしたりと自由にしていた。
「きんさ〜ん、いい七三だね〜」
「はいはい……」
「彼らは……戦争で、住む場所や家族を失った子ども達だよ。今は私の家に住んでる。孤児院に行くことも出来るけれどね」
「……ふーん」
彼の視線は四人に向けられたまま。四人は笑ったり驚いたり、素直に表情を変えながら遊んでいる。私達の目線に気がついたのか、こちらを見て笑いかけてきた。手を振って応えれば、彼らも振り返す。
すぐ隣に座る少年は、そんな彼らをぼんやりと見ていた。諦念に、憧憬が混ざったような、そんな顔をして。
「……どうしたらいいんだ」
「とりあえず、魔法を使うのはやめるべきだね」
「……」
私を見るアメジストは、そうじゃない、とでも言いたげだ。
「このことは秘密にしよう。幸い、誰も大きな怪我はしてない」
「おいで。私たちと一緒に。もちろん、君さえ良ければ」
「……うん」
囁くような小さな声で、だが確かな喜びを孕んだ声色で、微笑みながらそう言った。彼の笑顔は、とても綺麗だ。小さな悪魔使いの薄く染った頬に、鮮やかな光が落ちていた。
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葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。世界観は特にこだわっておりますので、そう言って頂き本当に嬉しいです。明日以降もたくさん楽しんでいって下さい。 (2023年3月28日 22時) (
レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - まずは、4章までの更新お疲れ様です。世界観の作り込みが本当に細かく、一話毎に感想を伝えられないのが残念です(笑)お体にお気をつけてください！更新楽しみにしてます。 (2023年3月28日 20時) (レス) @page42 id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉、大変励みになります。実は雪の降る頃は非公開でしたので、まだ読めなかったんです……季節外れですが、楽しんで頂ければ幸いです。今後も頑張ります！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - とても読みやすい文章で、心情の表現や描写も素敵です！雪の降る頃に見つけられなかったのが悔やまれます(笑)陰ながら応援しています。更新頑張ってください！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄 | 作成日時：2021年5月13日 17時
