悪魔祓いとガラスの陽だまり 10 ページ31
はぁ、と小さく息を吐く。簡単に悪魔を操る少年。おかしなことばかり起きる。先程、彼が唱えたのは私達のような聖職者だけが扱う呪文の類だろう。子ども相手に手荒なことはしたくないんだが。
そう思った瞬間。背後から、別の気配がした。振り返れば、祓い損ねた悪魔。かなり接近されている。間に、合わない。
「おらァ！」
声が聞こえる。私は構えた拳銃を下ろした。私の眼前数センチメートルの所で、悪魔は霧散したのだ。黒い霧の反対には、ナイフを持ったシャークんが、緑色の目を光らせて立っていた。
彼の後ろから他の三人も雪崩込むように入ってくる。私が驚いている間に、シャークんは少年に詰め寄った。
「おまえ、おれのマスターに何すんだよ！」
「うっ……！」
シャークんは彼の肩を突き飛ばす。少年は簡単に椅子から転げ落ちた。それと共に、からんという音。何かが落ちたらしい。すると、物影から大勢の悪魔達が現れ、そして、少年目掛けて突進していく。
『鐘の音を聞け！』
血と聖水で汚れた魔導書は、光の輪を吐き出す。輪は同心円状に広がり、悪魔を消していった。廃れた教会の鐘が揺れ、定刻でも無いのに鳴き声を上げた。
少年は狼狽え、何かを探すように地面を見回している。彼に従っていた悪魔は、彼の命令を無視して完全に敵対していた。狙われていたのは間違いなくあの少年だった。痛みを訴え始めた頭を押さえる。
「ねぇ、もしかして、これさがしてる？」
そう言って少年に近づいたのはBroooockだ。彼の手には丸いブローチが収まっている。
「か、返せよ！」
「え〜……やだ！」
形勢逆転、といったところだろうか。ブローチを奪い返そうとする少年を、Broooockは笑いながら器用に躱している。……おちょくっているな。Nakamuは少し震えた手で私の外套を掴んでおり、怯えが見て取れた。きんときが彼に寄り添う。
「Broooock、その辺りで意地悪はやめてあげなさい」
「ん〜、わかったよ〜」
「代わりに少し、私達とお話してもらおう」
私が言うと、少年は鮮やかな紫色をこちらに向け、諦めたように首を小さく縦に振った。シャークんはナイフを鞘にしまったが、相変わらず鋭い目付きをしている。
教会に光が戻っていく。色のついた陽だまりの中で、静かに語られたのは、悲しい禁忌の物語だった。
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葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。世界観は特にこだわっておりますので、そう言って頂き本当に嬉しいです。明日以降もたくさん楽しんでいって下さい。 (2023年3月28日 22時) (
レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - まずは、4章までの更新お疲れ様です。世界観の作り込みが本当に細かく、一話毎に感想を伝えられないのが残念です(笑)お体にお気をつけてください！更新楽しみにしてます。 (2023年3月28日 20時) (レス) @page42 id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉、大変励みになります。実は雪の降る頃は非公開でしたので、まだ読めなかったんです……季節外れですが、楽しんで頂ければ幸いです。今後も頑張ります！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - とても読みやすい文章で、心情の表現や描写も素敵です！雪の降る頃に見つけられなかったのが悔やまれます(笑)陰ながら応援しています。更新頑張ってください！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄 | 作成日時：2021年5月13日 17時
