悪魔祓いとガラスの陽だまり 7 ページ28
「三人とも、何かあったの？」
Nakamuと共に他の子ども達の元へ戻ると、彼らは皆で同じ方向を見ていた。目線の先には黒い服の男がおり、その男は子どもを追いかけているようだ。
「あの人、きょうかいの人？」
「だろうね。教会の中には専門機関として子どもの家を作っている組織があるから、その一員だと思うよ」
「どういうこと？」
「……孤児院の人だということだよ。みんなも、いつでもそっちに行っていいんだからね」
彼らは、本当はそこに行くはずの存在。ただ私が、自己満足のためにこうして一緒に暮らしているだけ。分かっている。
……分かっている。
「ぼくはマスターといっしょがいい！」
「え？」
「おれも！」
「ぼくは、マスターにたすけてもらったから」
「もちろん、おれも」
……嬉しかった。純粋に、その言葉を向けてくれたことが。私は、自己満足の為に彼らを住まわせているんじゃない。私は、彼らを心から愛している。守りたい。共にいたい。そう思う気持ちに嘘はない。例え、彼らにかつての自分を重ねていたとしても、私はそれだけの人間じゃない。
「ありがとう、みんな。私もみんながいてくれると明るい気持ちになる」
「ほんと？」
「もちろん、本当だよ」
家族がいないという理由で、不幸な目に遭う。世界の不公平さを、理不尽に知らされる。そんなことは赦されてはならない。
だが、権力の前に、正義は無力だ。私には、目の前で行われている「狩り」を止めることは出来ない。
「……みんな、行こうか」
そう言って足を向けた先。遠くの建物の前で、小さな悪魔が私を見ていた。そこは教会の跡地だったようで、白い壁はぼろぼろと崩れ落ち、垂れ下がった旗も破けている。その場所だけ時代に置いていかれたように、戦争の終結を知らないように見えた。
悪魔は黒い砂に紛れながら、大きな目でこちらをずっと見ている。夜の闇にも似た影は口を大きく歪ませ、ぼとぼとと何かを落とした。
「下がって。悪魔が私達を見てる」
「え？」
腰の魔導書に手を伸ばす。目を離さないように。瞬きをする余裕もない。絶対に子ども達を守る。
それが無謀なことだと、確信していたとしても。
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葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。世界観は特にこだわっておりますので、そう言って頂き本当に嬉しいです。明日以降もたくさん楽しんでいって下さい。 (2023年3月28日 22時) (
レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - まずは、4章までの更新お疲れ様です。世界観の作り込みが本当に細かく、一話毎に感想を伝えられないのが残念です(笑)お体にお気をつけてください！更新楽しみにしてます。 (2023年3月28日 20時) (レス) @page42 id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉、大変励みになります。実は雪の降る頃は非公開でしたので、まだ読めなかったんです……季節外れですが、楽しんで頂ければ幸いです。今後も頑張ります！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - とても読みやすい文章で、心情の表現や描写も素敵です！雪の降る頃に見つけられなかったのが悔やまれます(笑)陰ながら応援しています。更新頑張ってください！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄 | 作成日時：2021年5月13日 17時
