悪魔祓いとガラスの陽だまり 6 ページ27
会計を済ませて店を出る。ゆっくりと歩きながら子ども達の防寒具や祝祭のお菓子を見て回っていると、服の裾を控えめに引かれた。
その主はNakamuで、彼は口篭りながら何かを伝えようとしている。長い睫毛を何度も動かし、緊張と恥じらいを混ぜたような目線で訴えかけてきていた。
「欲しいものが見つかった？」
「……うん」
彼の手の中にあるのは、悪魔の力を弱める魔法がかけられたぬいぐるみだ。それは東洋の動物……パンダを模したものらしく、可愛らしくデフォルメされた白黒の体はふわふわの毛で覆われている。
「その子が気に入ったんだね。連れて帰ろうか」
「あ、ありがとう、マスター」
彼は丸い頬を少し紅く染めて言う。爽やかなスカイブルーの瞳が輝いたように見えた。
……無意識か意識的かは分からないが、彼が自身の持つ悪魔の力を恐れていることは明白だ。原因も経緯も、いつか教えてくれる時がくるまでは触れないでいよう。少なくとも、何も起きない限りは。こんなことが教会に知られたらどんな罰則を受けるだろうか。
そんなことを考えながら店員にお代を払う。すぐ横でNakamuがぎゅっとぬいぐるみを抱きしめ微笑むのが見えた。今はこの景色を守ることだけを考えていればいい、なんて、あまりにも無責任だ。だがそれは、彼の幸せを奪っていい理由にはならない。少なくとも今、彼は私が守るべき一人なのだ。
「「マスタぁー！」」
「今行くよ。ほら、Nakamuも行こう」
「うん！」
彼に手を差し出すと、ぬいぐるみを抱え直して小さな手を重ねてくれた。少しずつで良い。彼にとって安心できる場所を作ってあげたい。私が、そうなれるかは別の問題だが。
繋いでいた手が、少し強く握られる。
「どうしたの」
「ぼく、お買いものしたのはじめてだから、すっごくたのしくて」
そう言って嬉しそうに笑う彼の姿は、間違いなく私の救いだった。小さな手から伝わる温もりが、全身に広がっていくように思える。この少年が悪魔の力を秘めているなんて、今でも信じられない。
「それは良かった。祝祭が始まったら、きっともっと楽しいよ」
「本当？ しゅくさい、たのしみだなぁ……」
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葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。世界観は特にこだわっておりますので、そう言って頂き本当に嬉しいです。明日以降もたくさん楽しんでいって下さい。 (2023年3月28日 22時) (
レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - まずは、4章までの更新お疲れ様です。世界観の作り込みが本当に細かく、一話毎に感想を伝えられないのが残念です(笑)お体にお気をつけてください！更新楽しみにしてます。 (2023年3月28日 20時) (レス) @page42 id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉、大変励みになります。実は雪の降る頃は非公開でしたので、まだ読めなかったんです……季節外れですが、楽しんで頂ければ幸いです。今後も頑張ります！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - とても読みやすい文章で、心情の表現や描写も素敵です！雪の降る頃に見つけられなかったのが悔やまれます(笑)陰ながら応援しています。更新頑張ってください！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄 | 作成日時：2021年5月13日 17時
