悪魔祓いとガラスの陽だまり 3 ページ24
祝祭日。我が国のイベントの中でも最も盛大に行われる、新たな年を迎えるための行事。祭りやパーティなどがあちらこちらで行われて、街ではホリデーマーケットが開かれ、多くの人々が祝祭のための買い出しに出る。豪華な食事や色とりどりの装飾、白い服は欠かせない。最終日には教会から来年の神託が降ろされ、聖なる火が人々を清め癒す。戦争が終わってから初めての祝祭は、民衆の心の支えになるだろう。
「みんな、今日はホリデーマーケットに行くから、準備をしてね」
「ほりでーまーけっとってなに？」
「お祭りの準備のためのお店がたくさん並ぶんだよ。きっと楽しいよ」
「やったー！」
案の定、アスピラシオンの街は非常に賑わっていた。昨日までは殺風景だった街並みも、のぼり旗やガーラント、たくさんの花などで飾られている。リースや蝋燭、魔除けの装飾品から肉や魚、お菓子、服にアクセサリーなど、様々な物品が出店に並ぶ。この風景を見るのも、実に十年ぶり。
「さぁ、今日はいっぱい買い物をしよう！」
まずは仕立て屋に行って全員分の白い服を注文する。これは最終日の神託授受の式典に必要なものだ。それから今年の祝祭日の縁起物である動物の尾を模した飾りを買って、出店に出ている星のオーナメントをいくつか選ぶ。
「ますたぁー！ やべえ！ これ見て！」
「マスター、マスター、あっちなに？ あれなに？ あの光ってるやつ見たい！」
「みんなまって……あし、つかれたぁ……」
すごく、すごく大変だ……！ 元気な二人組は次々と目新しいものに惹かれては私の所に持ってきたり見せようとしたりで振り回され、大人しい二人も家の中暮らしだったからか体力が無いため頻繁に休憩が必要で……賑やかなのは楽しいが、しかしどうしても忙しい！
「マスター、おれもちょっとつかれちゃって、お昼ごはん、たべたいです」
そんな私の目が回るような様子に気がついたのか、きんときが控えめに私に言う。よく気が利く。私のことまで気にかけているなんて……
「そうだね。三人とも、ちょっと落ち着いて、ご飯にしよう」
「ありがとうね」
私が彼にだけ聞こえるようにそう言うと、少し頬を紅くして笑みを見せる。小さな幸せが、かじかむ体の奥にある心臓を、温めてくれたような気がした。
悪魔祓いとガラスの陽だまり 4→←悪魔祓いとガラスの陽だまり 2
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 102人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。世界観は特にこだわっておりますので、そう言って頂き本当に嬉しいです。明日以降もたくさん楽しんでいって下さい。 (2023年3月28日 22時) (
レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - まずは、4章までの更新お疲れ様です。世界観の作り込みが本当に細かく、一話毎に感想を伝えられないのが残念です(笑)お体にお気をつけてください！更新楽しみにしてます。 (2023年3月28日 20時) (レス) @page42 id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉、大変励みになります。実は雪の降る頃は非公開でしたので、まだ読めなかったんです……季節外れですが、楽しんで頂ければ幸いです。今後も頑張ります！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - とても読みやすい文章で、心情の表現や描写も素敵です！雪の降る頃に見つけられなかったのが悔やまれます(笑)陰ながら応援しています。更新頑張ってください！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：葡萄 | 作成日時：2021年5月13日 17時
