悪魔祓いとガラスの陽だまり 2 ページ23
二人はまた座り直し、私はまたホットミルクをカップに注ぐ。Nakamuがやけに角砂糖の瓶を気にしていたので、好きに入れるように言った。
「マスターは、あくまをどう思いますか。もしなかむが、いつか何かあったら」
「……きんときは、どうして北部と南部が戦争をしていたのか知ってる？」
「え？」
悪魔を取り巻く問題は、個人の感情や経験、善悪の判断では解決しない。それは、戦争を引き起こすほど。
「南北戦争の原因はそれなんだ」
反悪魔を掲げる北部は、魔法の力を以て悪魔とそれに付随する一族を排斥する。それに対し、親悪魔側の南部は悪魔の力を借りた開発を行う。北部にいた悪魔の血を持つ人々は南部に逃げ、逆に南部の悪魔を恐れる人々は北部に逃げた。南部は悪魔も生物だと主張し倫理観を問う。北部は人々の安全が第一だとして安寧を求める。抗争は何十年も続き、そして十年前、ついに戦争が始まった。
結果、北部の勝利と共に、悪魔と悪魔崇拝者、その血を引く者たちは国家から居場所を失った。
「このままではNakamuの身は危ない。君が何者であろうと、悪魔の力を有している限りは」
Nakamuは緊張して身体を強ばらせている。カップの持ち手を握る右手に、力がこもっているのが分かる。
「そして、ここからは私の気持ちだ」
もし誰かを傷つけるようなことがあったら、私はこの子を……自信が無い。頭では悪魔と分かっていても、心が邪魔をする。虐待され、人を恐れ、怯え、自身の力によって簡単に壊れてしまう。まだ、子どもなのに。それを分かっていて、私は容赦なくいられるか？ 無理だ。Broooockから大切な人を奪ったように、また命を潰す痛みを味わうのが、怖い。
「正直、どうなるか分からない。でも最大限、Nakamuのことは守る。約束する」
「……うん、マスター、ありがとう。おれ、なかむがまたあぁなったらどうなるんだろって、こわくて。でも、よかった」
「ありがとう……えっと、マスター……？」
Nakamuはきんときの言葉を困惑しつつ繰り返す。少しだけ緊張も和らいだように見えた。
それから少し談笑して、二人におやすみと言った。客間には二人分のベッドがあるが、子ども四人でも狭いだろう。また別の部屋を用意しようか。
そんなことを考えながら、私も床に就く。狭い部屋に仕事道具と最低限の家具、黒い服。
私も話していないことは沢山ある。いつか、話すべきなのだろうか……いや、今日は早く眠ってしまおう。
明日から、祝祭の準備が始まる。
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葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。世界観は特にこだわっておりますので、そう言って頂き本当に嬉しいです。明日以降もたくさん楽しんでいって下さい。 (2023年3月28日 22時) (
レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - まずは、4章までの更新お疲れ様です。世界観の作り込みが本当に細かく、一話毎に感想を伝えられないのが残念です(笑)お体にお気をつけてください！更新楽しみにしてます。 (2023年3月28日 20時) (レス) @page42 id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉、大変励みになります。実は雪の降る頃は非公開でしたので、まだ読めなかったんです……季節外れですが、楽しんで頂ければ幸いです。今後も頑張ります！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - とても読みやすい文章で、心情の表現や描写も素敵です！雪の降る頃に見つけられなかったのが悔やまれます(笑)陰ながら応援しています。更新頑張ってください！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄 | 作成日時：2021年5月13日 17時
