悪魔祓いとガラスの陽だまり 1 ページ22
コトン。ホットミルクが入っていたマグカップが二つ、テーブルに並ぶ。今はどちらも空だ。暖炉の火は弱まり、Nakamuの発作も完全に止んだ。
「落ち着いた？」
私の言葉に遠慮気味に首を縦に振る。きんときは元気づけるようにNakamuの肩を軽く叩いた。
「私は君を知りたい。どんなことを聞いても、私は君に手を上げないし、君は言いたくないことは言わなくていい」
こくりと頷く。目を合わせてくれない。昼間とは状況が違うのだから、警戒を解くのは更に難しい。
「だからまずは……私のことを話そう」
それを聞いて驚いたのか、私を見て、そしてまた顔を逸らした。長い前髪が邪魔したが、それでも目だけは私を見ているのがなんとなく分かった。
「私はAという。名乗るような苗字は無い。職業は北部政府認定悪魔祓い。この家は遠い親戚から貰った。生まれはここよりもっと北の町。育ちは教会の孤児院だ」
そこまで言うと、きんときは少し気まずそうに目を伏せ、Nakamuはこちらを向いていた。二人の不安げな表情で、彼らの人生がどんなものか、また少し想像できた。
「この赤い目と髪は忌み子の証、家では悪魔の子だと騒がれた。実際はただの隔世遺伝……えっと、家族とちょっと違うから、嫌われてたんだ」
ざあぁ、と窓の外の木が風に揺られる音がする。
「私はそれから身売りに出され、その先でも悪魔と罵られ、辿り着いたのが教会。そして悪魔祓いの道を選んだ。私は、かつて悪魔と呼ばれた悪魔祓いだ」
ぱちぱちと、暖炉の音がする。
「これが私、Aだよ」
二人はお互いの顔を見て、私を見て、言葉に迷い、そして先に口を開いたのはNakamuだった。
「ご主人さまは、あくまじゃありません。ぼくのことも、きんときのこともたすけてくれたし、やさしいです」
「……ありがとう」
「でも、ごめんなさい。言えないんです。言うなと言われていて、だから……本当にごめんなさい」
頭を下げるNakamuの手は、服の裾をまた強く握り締めている。皺になったら大変だ。
「いいんだよ。つまらない話を聞かせちゃったね。でも、いつか話してもいいと思えたら、その時に教えて。今日はもう遅いから……二人とも、もう寝るといい」
「……はい、おやすみなさい」
Nakamuはとても小さな声で就寝の挨拶をする。きんときは私を見て言った。
「おれは、まだ話したいことがあります」
「うん、いいよ。Nakamuはどうする？」
「え……ぼくも聞いてていい？」
「……うん」
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葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。世界観は特にこだわっておりますので、そう言って頂き本当に嬉しいです。明日以降もたくさん楽しんでいって下さい。 (2023年3月28日 22時) (
レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - まずは、4章までの更新お疲れ様です。世界観の作り込みが本当に細かく、一話毎に感想を伝えられないのが残念です(笑)お体にお気をつけてください！更新楽しみにしてます。 (2023年3月28日 20時) (レス) @page42 id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉、大変励みになります。実は雪の降る頃は非公開でしたので、まだ読めなかったんです……季節外れですが、楽しんで頂ければ幸いです。今後も頑張ります！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - とても読みやすい文章で、心情の表現や描写も素敵です！雪の降る頃に見つけられなかったのが悔やまれます(笑)陰ながら応援しています。更新頑張ってください！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄 | 作成日時：2021年5月13日 17時
