悪魔祓いと召使い 9 ページ20
「いいんだよ。これから先、たくさんの良いことが君を待ってる」
「へへ……」
きんときは少し擽ったそうにしながら、笑みを見せてくれた。指の指の間を、彼のさらさらとした髪が通る。燭台に乗った魔法の蝋燭。その橙色の光に、ふわりと照らされている。
「きんとき。君のことを教えてくれる？ 嫌なことは言わなくていいから」
「うん……」
彼の話によると、彼の出自は曖昧で、親の顔は覚えていない。年齢を考慮すると戦争の影響によるものだろう。路頭に迷っていた所を、あの家の主人の妻に気に入られ、召使いの見習いとして迎え入れられたそうだ。だが、実態はそんなものでは無かった。毎日のように浴びせられる怒声、暴力、熱湯、鬱憤。……古傷の原因。Nakamuがやって来てから、きんときへの虐待は無くなったが、一度Nakamuを庇ったことで生死の境に陥った……
「あのときは、首をぎゅってつかまれて。いたくて、苦しくて、だんだん目が見えなくなって、おれ、しんじゃったかと思ったんだけど、なんとか大丈夫だった。それから、Nakamuともっと友だちになったんだ」
言葉を紡いでいくのを見ているのが、辛かった。こんな子どもに、どうしてそんなことが出来るの？ 勇気のある子だ。本当に。
「君は本当に頑張った。よく頑張ったね。生きていてくれて、ありがとう」
「うん。おれ、生きててよかった」
そう言うと、カイヤナイトに似た真っ青な瞳から、つぅと涙が流れた。そうするとどんどん止めどなく溢れては落ち、溢れては落ちる。小さな声で嗚咽する彼を、優しく抱き締めた。こんなに泣き声が小さいのは、我慢が染み付いてしまったから？
「きんとき？ 泣いてるの？」
いつの間にいたのだろう。Nakamuが扉の前に立っていた。暗くて顔がよく見えない。
「ご、ご主人さま。おねがいです。きんときをいじめないであげてください。それならぼくが」
「Nakamu、ちがうよ。おれ、マスターがやさしくしてくれたのがうれしかっただけだから。何にもされてないよ」
「え、ぁ、でも……じゃあ、あのぼく、ご、ごめんなさい！」
動揺して言葉を詰まらせながらNakamuは頭を下げる。小さく震えているようで、ズボンをぎゅっと掴んでいた。
「謝ることは無いよ。こっちへおいで」
Nakamuは俯いたままゆっくりと歩を進める。顔を上げて、大きな瞳が私を見る。それは、見たことが無いほど赤い、血の色をしていた。
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葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。世界観は特にこだわっておりますので、そう言って頂き本当に嬉しいです。明日以降もたくさん楽しんでいって下さい。 (2023年3月28日 22時) (
レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - まずは、4章までの更新お疲れ様です。世界観の作り込みが本当に細かく、一話毎に感想を伝えられないのが残念です(笑)お体にお気をつけてください！更新楽しみにしてます。 (2023年3月28日 20時) (レス) @page42 id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉、大変励みになります。実は雪の降る頃は非公開でしたので、まだ読めなかったんです……季節外れですが、楽しんで頂ければ幸いです。今後も頑張ります！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - とても読みやすい文章で、心情の表現や描写も素敵です！雪の降る頃に見つけられなかったのが悔やまれます(笑)陰ながら応援しています。更新頑張ってください！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄 | 作成日時：2021年5月13日 17時
