悪魔祓いと召使い 8 ページ19
「君はずっと、友達が酷い目に遭うのを傍で見ていた。辛かったよね。代わってあげられたらって、思ってただろう？」
ゆっくりと、話す。萎縮させないように、目を見つめすぎないで語りかける。この子は心を痛めている。大切な人を守れないことを悔やんでいる。だからこんなにも自己犠牲的なのだ。触れた大人が、あまりにも腐っていたから。
彼は黙って聞いている。
「私にとってみんなは、素敵な未来と夢を持った宝物なんだよ。それは誰か一人だけじゃない。だから自分を蔑ろにしちゃいけない。もちろん、他の子のこともね」
少し間を置いて。
「自分より他の人を大切にするのは、褒められるべきことだよ。君はとても優しい。でも、君が自分を犠牲にしようとするのは、皆からしたら悲しいんじゃない？」
「はい……えっと、ないがしろって、何ですか」
「あぁ……大事にしないこと、かな。他の人と同じくらい、自分も大事にしてあげて」
「はい……！」
そう言うと、彼は控えめに笑う。しかしそれは、今まで見せていた笑顔とは違う、子どもらしいあどけない顔だった。細められた大きな目が、ほくろのついた少し紅潮した丸い頬が、年相応の
「ご主人さまは、むずかしいことばを使うことが多いから、ぶるっくは困ってませんか？ 公用語はあんまりとくいじゃないらしいので」
「確かに、ときどき困らせてしまうね……いや、それよりご主人様なんて呼び方はやめなさい。私は君の主人じゃない。それに、敬語なんて使わなくていいんだよ。家族だと思ってくれたら、私は嬉しい」
「え、でも……じゃあ……マスター？」
……もう何でもいいか。意味はほとんど変わらないのだが……呼びやすいのなら、好きなようにさせてしまった方がいいのかもしれない。
「……好きに呼ぶといいよ」
彼の青みがかった黒髪に触れようと、手を伸ばす。小さな頭。彼は一瞬驚いて身体を震わせたが、すぐに私の目を見て微笑む。大丈夫、私は手を上げたりしない。そんな気持ちを込めて、優しく撫でた。
「おれ、こうやって大人の人にやさしくしてもらうの、すっごく久しぶりで……ありがとう、マスター」
甘えることを知らない子どもの、精一杯の甘えた言葉。この優しい子どもに、あとどれだけ、私は愛を教えるだろう？
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葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。世界観は特にこだわっておりますので、そう言って頂き本当に嬉しいです。明日以降もたくさん楽しんでいって下さい。 (2023年3月28日 22時) (
レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - まずは、4章までの更新お疲れ様です。世界観の作り込みが本当に細かく、一話毎に感想を伝えられないのが残念です(笑)お体にお気をつけてください！更新楽しみにしてます。 (2023年3月28日 20時) (レス) @page42 id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉、大変励みになります。実は雪の降る頃は非公開でしたので、まだ読めなかったんです……季節外れですが、楽しんで頂ければ幸いです。今後も頑張ります！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - とても読みやすい文章で、心情の表現や描写も素敵です！雪の降る頃に見つけられなかったのが悔やまれます(笑)陰ながら応援しています。更新頑張ってください！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄 | 作成日時：2021年5月13日 17時
