悪魔祓いと召使い 7 ページ18
帰路を急いだが、家に着いたのは夕方だった。悪魔退治の後処理と報告、子ども達の治療と食事、部屋を片して聖水を補充して……やることは山積みだ。
「Nakamu、少し冷たいよ」
「ぁ、はい……ひゃ！」
傷は思っていたよりも痛々しかった。服の下、主に胸元から腹部にかけての鬱血痕。腕に並んだ小さな火傷跡。古いものから新しいものまで、様々。殴る蹴る、根性焼き……分かりやすい虐待だ。心を閉ざしても無理はない。性暴力に至ったか否かは判断できないが、そんなことがあったとしたら……憤りを覚える。最低の大人だ。悪魔になっても仕方がない、なんて言いたくないが、そんな考えが過ぎった。
「きんときも、掴まれた所を見せて」
「……はい」
きんときにはNakamuとは対照的に、暴力の痕跡は少なかった。現在の標的は一人だけだったのか。古い傷跡のようなものはいくつかあるものの、治りかけだ。しかしそれ以上に、瘴気に当てられた箇所が酷い。黒い手形がくっきりと浮かび、じわじわと広がっている。聖水と植物から抽出した液体を浸したガーゼで覆って、上から包帯を巻く。不器用ゆえ、巻き方はたどたどしくなってしまったが、これで快方へ向かうだろう。
朝早くから初めてのことの連続だったので、子ども達は治療と夕食の後に部屋で休ませた。二人への挨拶もままならないが、仕方がない。
悪魔憑きとの戦闘の記録を残して、教会に報告しなければならない。偽造した書類は魔導書の光で消えてしまったが、あの家に人間が残っていたら大変だ……そんなことを考えていれば、夜も更けていく。
「あの」
突然話しかけられ、驚きで私の手からガラスペンが落ちる。からん。……幸い割れることは無かった。
「どうしたの？ きんとき」
彼はずっと落ち着かない様子だった。悪魔に襲われたのだから、それもそうだろう。それなのに、帰路も家に着いてからも、ずっとNakamuのことを気にしていたのだ。私ももっと気にかけるべきだったのだが。
「ぼく、何でもやるので……ぼくがやるので、Nakamuやぶるっくや、シャークんには……」
「？」
「元の家で、色々やって、きゅうじもそうじも、洗たくもできます。だから、ほかのみんなには」
「きんとき。私は端から、そんな事は望んでないよ」
この子が落ち着けないのは、これが原因だったのか。ずっと緊張していて、距離を取り続ける。治療をしている時も、やけに周りばかり気にしていると思っていた。
「私は、未来を守りたいんだ」
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葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。世界観は特にこだわっておりますので、そう言って頂き本当に嬉しいです。明日以降もたくさん楽しんでいって下さい。 (2023年3月28日 22時) (
レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - まずは、4章までの更新お疲れ様です。世界観の作り込みが本当に細かく、一話毎に感想を伝えられないのが残念です(笑)お体にお気をつけてください！更新楽しみにしてます。 (2023年3月28日 20時) (レス) @page42 id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - 名無しさん» 名無し様、コメントありがとうございます。嬉しいお言葉、大変励みになります。実は雪の降る頃は非公開でしたので、まだ読めなかったんです……季節外れですが、楽しんで頂ければ幸いです。今後も頑張ります！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 174f99a722 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - とても読みやすい文章で、心情の表現や描写も素敵です！雪の降る頃に見つけられなかったのが悔やまれます(笑)陰ながら応援しています。更新頑張ってください！ (2023年3月18日 19時) (レス) id: 8b083f4a7d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄 | 作成日時：2021年5月13日 17時
